リモートディテーリングとは? 需要増加の背景、課題について解説
- 2024.11.01
- 診断・治療
- ウェルネスの空 編集部
新型コロナウイルス感染症の拡大以降、施設訪問を自粛する代わりにリモートディテーリングを導入する製薬企業が増加しています。「自社でも導入すべきか」「どのようなメリットがあるのか」と考えているMR(医薬情報担当者)も多いのではないでしょうか。そこで、リモートディテーリングの概要やメリット、導入にあたっての課題などについて解説します。
リモートディテーリングとは?
ディテーリングとは、製薬企業のMRが医師に直接自社の医薬品やサービスの情報を提供・提案することを指します。
医薬品の効果や品質、安全性、適切な使用方法などについて解説したり、医療機関が抱える課題の達成に役立つ医薬品やサービスを提案したりといった商談です。
そしてリモートディテーリングとは、上記をリモートで実施することを指します。リモートMR、オンラインMR、リモート・ディテールなどと呼ばれることもあります。リモートでの会議と同じく、オンラインMTG用のツールを使って行うのが一般的です。
リモートディテーリング需要増加の背景
近年、リモートディテーリングを導入する製薬企業が増加しています。
医師の情報収集チャネルが多様化
リモートディテーリングが広まっている理由のひとつが、医師の情報収集チャネルの多様化です。医師は非常に多忙な場合が多く、MRと対面して医薬品やサービスの説明を受ける時間を捻出するにも苦労しがちです。
そのため最近は、インターネット講演会(ウェビナー)やオウンドメディアのような、デジタル技術を活用した方法で情報収集する医師が増えています。こうした方法だと、面談の予定を組んだり移動したりする必要がなく、ちょっとした空き時間に気軽に利用できるためです。
しかしながら、医薬品に関する専門知識をもち、自社の医薬品について熟知しているMRによる情報取集を、依然として重視している医師も少なくありません。その結果、MR×デジタルの言わば「良いとこ取り」ともいえるリモートディテーリングの需要が高まっています。
コロナ禍による非対面の浸透
医師の情報取集チャネルの変化に加え、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の拡大もリモートディテーリングの増加を後押ししています。
コロナ禍では、多くの企業で非対面でのコミュニケーションが浸透しました。特に医療機関は院内感染防止の観点から、一般の利用者はもちろんMRの訪問にも規制をかけざるを得ませんでした。
しかし、MRと一切接触しないと、医薬品に関する信頼性の高い情報が入手しづらくなります。その結果、非対面でMRとコミュニケーションが取れるリモートディテーリングの需要が高まりました。
ちなみにMRの多くは訪問とリモートの選択肢を用意していますが、医師側の少なくない数が非対面での情報収集を望んでいるとの調査結果があります。もちろんすべてが非対面になったわけではないものの、リモート需要が増加していることがわかります。
参照元:ミクスOnline
リモートディテーリングのメリット
リモートディテーリングを行うことには、下記のようなメリットがあります。
医師の予定に合わせた面談を行える
リモートディテーリングの最大のメリットは、時間や場所の制限を受けにくいことです。訪問の場合、相手先までの移動時間を考慮して予定を組まなくてはなりません。医師の空き時間に間に合わず、なかなか対面が果たせないこともあります。
一方、リモートの場合はオンラインMTGができる環境が整ってさえいれば、どこからでも実施可能です。移動時間や場所を確保する必要がないため、医師の予定最優先で面談・情報提供が行えます。
また、訪問だと相手先に迷惑がかかるため複数人での参加は難しいですが、リモートであれば何人参加しても邪魔にはなりません。
デジタル活用による面談の分析・ナレッジ共有を行える
デジタルな方法を導入することにより、面談で得た情報をデータとして蓄積・活用できる点もメリットです。音声や表情などのデータを分析すれば、薬剤への医師側の反応や現在抱えている課題などを把握するのに役立ちます。
また、蓄積したデータをナレッジ共有し、他院での活動に活かすことも可能です。部署内で共有すれば業務の属人化も防止できるため、休職や退職によって重要な情報が失われるリスクも軽減できます。
ちなみにデータを蓄積する際に起こりがちな入力漏れの問題については、CRMなどとシステム連携させると防止しやすくなります。なお、医師との面談データを活用する場合は、事前に医師の同意を得るようにしましょう。
リモートディテーリングの課題
医師とMRの双方にメリットがあるリモートディテーリングですが、導入にあたって知っておきたい課題もあります。
リモート環境・システム構築が必要
リモートディテーリングを実施するには、医師と製薬企業の双方がリモート環境を構築する必要があります。
また、面談データの活用やナレッジ共有のためにシステムを連携したい場合は、CRMの導入と会議システムの連携が必要です。システムの導入やリモート環境の構築にはそれなりの手間と費用がかかることを知っておきましょう。
なお、新たにリモートディテーリングを導入する企業向けに、システム導入から運用までをワンストップで支援してくれるサービスもあります。
リモート特有のコミュニケーションスキルが必要
非対面のリモートディテーリングでは、訪問時とは異なるコミュニケーションスキルが求められます。ビデオ通話にすれば相手の表情は見えるとはいえ、実際に目の前にいるときと比較すると、僅かな表情の変化や雰囲気を感じ取りにくいためです。その結果、話すタイミングが被ってしまったり、声がよく聞こえず何度も聞き返すことになったりする場合もあります。
また、通信環境やシステムの調子が悪くラグが発生したり、画面がフリーズしたり、音声が一切聞こえなくなったりといったトラブルも起こりがちです。資料を見てもらうにも画面上に表示させて操作する必要があるので、慣れていない人では戸惑うこともあるかもしれません。
リモートディテーリングの際には、こうした非対面特有の悩みやトラブルに適宜対応しながら、自社の薬剤やサービスについて解説するスキルを身に付けなくてはなりません。このように、訪問のときとは異なるスキルが求められるので、リモート専任のMRを確保・育成することも検討しましょう。
リモートディテーリングサービスの活用
リモートディテーリングの普及により、いくつかの専門企業がリモートディテーリングを支援するサービスを提供するようになりました。前述のように、リモートディテーリングを実施するためにはいくつかの課題があるため、こういった専門企業が提供する支援サービスを活用することは、課題を早期に解決し、導入を推し進める手段の一つとなります。
代表的なものとして、製薬業界を中心に各業種のBPO経験が豊富なベルシステム24が「※次世代C-MR」というサービスを提供しています。
※次世代C-MR:セントラル/コンタクトセンター型のMR
MR活動をベルシステム24のセンターに集約化、リモートで情報提供を実施することで、MRが訪問できていないエリアのターゲット施設や医師に情報を提供したり、アポイントを取得することで、MRの工数削減や処方獲得に繋がることが期待できます。また、GVP、GPSPなどの関連法令に基づく豊富な安全性情報管理・報告業務経験等、豊富な運用実績を持っており、初めてのアウトソーシングの場合には安心して任せることができそうです。
関連ブログ:医師の働き方改革で変わる、MRの”訪問の代わりになる”情報提供手段とは
まとめ
非対面のコミュニケーションを求められる機会が増えている昨今、製薬企業にとってリモートリーディング導入は欠かせないものとなりつつあります。
移動時間や場所の確保が不要で医師の予定に合わせやすい、面談のデータを分析して他院でも活用できるなどのメリットもあるので、導入を検討してはいかがでしょうか。
ただし、導入のためにはリモート環境の構築やシステムの導入・連携などが必要です。自社で対応しきれない場合は、導入から運用までワンストップでサポートしてもらえるサービスを利用すると良いかもしれません。
また、非対面ならではのコミュニケーションの取りづらさや、通信回線のトラブルに対応するスキルも求められます。可能であれば、リモート専任のMRを確保・育成しましょう。
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