深刻な病院の人手不足|現状と対策について紹介
- 2025.01.16
- 診断・治療
- ウェルネスの空 編集部
病院の人手不足は、コロナ禍以降さらに深刻となっており、適切な対策が必要です。人手不足を解消したい病院の経営層の方に向けて、人手不足の現状や原因、人手不足によって起こる影響などを解説します。また、アウトソーシングをはじめとした効果的な解決策を紹介します。
医療業界は人手不足が深刻な状況
医療業界は医師や看護師だけでなく、受付の人員なども含めて、全体的に人手不足であるのが現状です。厚生労働省による雇用動向調査では、医療・福祉業界は入職率13.6%に対して、離職率13.3%というデータが出ており、入職率と離職率がかなり近い状況です。
参照元:「産業別入職率・離職率(一般労働者)(令和5年(2023))」|厚生労働省 ※P2ご参照
また、同じく厚生労働省による調査では、医療系の有効求人倍率の高さが明らかになっています。医師や薬剤師は1.88倍、保健師や看護師は1.86倍、医療技術者は2.87倍と、いずれも高い倍率です。介護サービスや保健医療サービスなども2~3倍で、福祉関連計2.51倍、介護関連小計3.11倍となっています。
参照元:「職業別<中分類>常用計 有効求人・求職・求人倍率(令和6年5月)」|厚生労働省 ※P1ご参照
人手不足の病院が増加している原因
なぜ人手不足に陥る病院が増えているのでしょうか。日本全体の医師不足や診療科・地域による医師数の偏りといった点もさることながら、主な原因は次の3つです。
・労働者人口の減少
・労働環境の厳しさによる離職
・医師の働き方改革による労働時間の制限
労働者人口の減少
少子高齢化による労働者人口の減少は、医療業界において特に深刻です。高齢化によって医療や福祉の需要は高まっているにもかかわらず、労働者人口の減少で人材の供給は減っており、慢性的な人手不足が生じています。厚生労働省の資料によると、要介護認定を受けた方の人数は令和2年までの21年間で約2.7倍にも増えました。
参照元:「介護分野の最近の動向について」|厚生労働省 ※P4ご参照
厚生労働省の資料「新たな地域医療構想を通じて目指すべき医療について」では、2020年から2040年で、85歳以上の救急搬送が75%増加、85歳以上の在宅医療需要では62%の増加が見込まれるとされています。
参照元:「新たな地域医療構想を通じて目指すべき医療について」|厚生労働省 ※P6ご参照
労働環境の厳しさによる離職
過酷な労働環境によって離職する方が多いことも、人手不足の原因のひとつです。医療業界は勤務時間が不規則で、残業や夜勤に加え、休日の勉強会や研修なども多く、毎日の忙しさに耐えられなかったり、プライベートの時間を確保しづらかったりして、離職する方が少なくありません。近年は新型コロナウイルスの流行によって病院が人手不足に陥り、一人あたりの業務量が増え、心身への負担の大きさから離職した方も多くいます。離職者が出ると人手不足はさらに進行しますが、新たな人材の確保は容易ではないのが現状です。
医師の働き方改革による労働時間の制限
2019年からさまざまな業種にて働き方改革が推進され、時間外・休日労働が規制されるようになりました。医師も、過重労働やそれに伴う本人の健康被害、患者への医療サービスの品質低下などが危惧され、2024年4月1日からは医師の働き方改革の運用が開始されています。
しかし、これまで長時間労働によって人手不足を補っていた側面があったため、この改革によって労働時間が制限され、人手不足がさらに深刻化しています。医師が不足している病院では、患者対応が難しくなる、病院や患者から働き方改革に対する十分な理解が得られないなど、さまざまな課題があります。
医師の働き方改革について詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事:【2024年施行】病院における医師の働き方改革とは? 看護師の現状も
病院の人手不足で考えられる影響
病院が人手不足に陥ることによって懸念されるのは、以下のような影響です。
・医療サービスの質の低下
・医療事故のリスク増大
・離職率の上昇
・新規採用の難化
スタッフ一人ひとりの業務量が増えると、患者への説明や受付での対応が不十分になる可能性があります。医療サービスの質が低下すると、病院のマイナス評価につながります。多忙な日々が続き、スタッフの余裕が無くなれば、医療事故など取り返しのつかない事態を招きかねません。また、人手不足の環境下は長時間労働や過重労働による離職を招きやすく、離職率が上昇しがちです。他方で、労働環境の悪さが広まれば、新規採用も難しくなります。
病院の人手不足を解消するための対策
人手不足を解消するための対策として、以下の3つの方法が有効です。
・給与や福利厚生を見直す
・ITを活用して業務を効率化する
・アウトソーシングを活用する
給与や福利厚生を見直す
代表的な解決策は、給与や残業代の引き上げです。業務内容や業務量と賃金が釣り合っていないと感じる方は多く、看護師の離職理由のひとつにも賃金の安さが挙げられます。賃金アップは人手不足を解消する手段としてだけでなく、業務に対するモチベーションアップにもつながります。
基本給を上げるのが難しい場合、夜勤手当や残業手当などを充実させると不満の軽減につながります。国や地方自治体の補助金制度の利用も検討してみましょう。
また、既存スタッフが長く働ける職場をつくるために、福利厚生の見直しも重要です。育児と仕事の両立が難しい、有給休暇を取得しづらいなどの不満が理由で離職に至るケースもあるため、保育所の設置やリフレッシュ休暇制度といった福利厚生を充実させ、離職を防ぎましょう。スタッフの要望を踏まえ、短時間勤務などの独自制度を取り入れることも有効です。
ITを活用して業務を効率化する
電子カルテ、自動精算システム、在庫管理システムなどを導入し、ITを活用した業務効率化を図ることも人手不足の解消に有効です。ITの積極的な活用は、スタッフの業務負担の軽減につながります。
電子カルテであれば、紙カルテのように目視で探す手間が省け、窓口業務の負担を軽減できます。問診表、予約管理、自動精算機などと連携できるシステムであればなお効果的です。近年は、音声やタッチペンで入力できる電子カルテや、病棟・病室の移動中にスマホから患者の情報を確認できるツールも登場しています。
新しいツールの導入においては、あらかじめ運用マニュアルを作成し、説明会や勉強会を開くなどして、スタッフが使いこなせるようにする必要があります。また、導入にかかる費用については、IT導入補助金などの利用も検討しましょう。
アウトソーシングを活用する
人手不足の解消には、アウトソーシングを活用する方法もあります。医療機関では、幅広い業務をアウトソーシングで行えます。アウトソーシングなら、解決策の提示から実際の業務改善に向けたDX導入などのアクションまでトータルで支援してくれるため、問題の速やかな解決を図れます。また、人手不足の解消だけでなく、業務の効率化、コスト削減などにも効果的です。
病院の業務負担軽減に!「医療事務BPOサービス」
医療事務BPOサービスは、業務の特性に応じて設計を行い、スタッフの業務負担を軽減するサービスです。委託可能な業務としては、以下のようなものが挙げられます。
・受電業務
・診療受付
・検診予約受付
・受診勧奨
・病棟クラーク など
これらにより人手不足の解消はもちろん、業務の効率化、コスト削減などさまざまな課題の解決にもなります。課題の可視化、手順やマニュアル化の支援、DX導入支援、バックアップ体制も整っています。
「医療事務BPOサービス」について、詳しくは以下のページをご覧ください。
参照ページ:医療事務BPOソリューション
まとめ
病院の人手不足は、少子高齢化による労働者人口の減少、業務量の増加に伴う離職などが原因で起こり、医療サービスの質の低下や離職率の上昇といった問題を引き起こすリスクがあります。解決策としては、給与や福利厚生の見直し、電子カルテなどITツールの導入、アウトソーシングの活用が挙げられます。医療事務BPOサービスは人手不足の解消だけでなく、業務効率化やコスト削減にも有効であるため、おすすめです。
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