22年度医療費、前年度から1.8兆円増加し過去最高の46兆円

厚労省が9月1日に発表した「令和4年度(2022年度) 医療費の動向」によれば、2022年度の医療費は46.0兆円で、前年度に比べて4.0%増、1.8兆円増加しました。2022年度は診療報酬改定が実施されネット改定率はマイナス0.94%でしたが、新型コロナ感染症の流行や不妊治療の保険適用が医療費を増加させた要因であることが考えられます。ここでは、調査結果の中から注目ポイントをご紹介します。

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医療費の推移

医療費はほぼ毎年数千億円伸び続けてきましたが、2020年に発生した新型コロナ感染症拡大により、コロナ重症患者への対応を行うため▽入院や手術の延期、▽コロナ病床への転換や病棟の一部の閉鎖、▽患者の受診控え-といった影響により、2020年度の医療費は前年度費3.1兆円減の42.2兆円で、19年度と比較し1.3%減少しました。2021年度に入ると外来患者が戻り始めたことや前年度の反動で医療費は前年度から2.0兆円、4.6%増と大きく伸長しました。2022年度は前年程ではないですが、1.8兆円、4.0%増加しており、ここ2年は著しく伸長しています。
なお、国民1人当たりの医療費は36.8万円で、前年度に比べて1.6万円・4.5%の増加、75歳以上の後期高齢者をみると、1人当たりの医療費は95.6万円で、前年度に比べて1.7万円・1.8%の増加でした。高齢化に伴う医療費の増加は避けられませんが、後期高齢者では国民1人当たりと比較して2.5倍以上医療費がかかっており、今後も少子高齢化が続くことから、医療費の適正化は我が国にとって今後も大きな課題であることがおわかりいただけると思います。

図 医療費の推移図 医療費の推移

表 1人当たり医療費の推移表 1人当たり医療費の推移

表 1人当たり医療費の伸び率(対前年度比%)

表 1人当たり医療費の伸び率(対前年度比%)

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診療種類別の推移

診療種類別の医療費を見てみましょう。まず、医療費の4割近く(39.4%)を占める医科入院費は18.1兆円、次いで医科入院外16.2兆円で35.3%となっており、この2つで全体の75%近くを占めています。前年度比をみると医科入院が2.9%増に対し、医科入院外は6.3%増加しました、患者の受療行動が回復してきたことに加え、発熱や呼吸器症状などコロナ関連患者が多く発生したため外来患者が増加、医療費が増加したことが考えられます。
また、医療費は多くないですが訪問看護療養費は2018年度の0.26兆円から、2022年度は0.5兆円とほぼ倍増しています。コロナ禍に関わらず毎年増加しており訪問看護ステーションの増加の影響によるものと考えられます。

表 診療種類別の概算医療費の推移
表 診療種類別の概算医療費の推移

表 診療種類別の概算医療費の伸び率(対前年度比%)
表 診療種類別の概算医療費の伸び率(対前年度比%)

医療機関の種類別の推移

次に、医療機関の種類別の1施設当たり医療費をみると、大学病院は210.8億円で前年度比4.0%増で法人や個人病院の伸び率を上回っており、急性期病院において患者増、収益増につながっていることが読み取れます。また、医科診療所は2021年度が前年度比7.0%増、2022年度も前年度比7.7%増と高い伸びを示しており、診療科にもよりますが2020年度の反動もあり外来患者が回復していることがわかります。一方保険薬局の2022年度の医療費の伸び率は0.4%増に留まりました。薬局数は増加している一方、院外処方率は頭落ちであることから、表の通りここ数年の保険薬局の1施設当たりの医療費は伸びていないことがわかります。

表 1施設当たり医療費の推移
表 1施設当たり医療費の推移

表 1施設当たり医療費の伸び率(対前年度比%)

表 1施設当たり医療費の伸び率(対前年度比%)

診療科別の推移

診療科別の医療費の推移についてみてみましょう。前年度と比較して2022年度に大きく伸びた診療科としては産婦人科(53.9%増)、小児科(30.8%増)、耳鼻咽喉科(20.0%)が目立ちます。産婦人科は不妊治療の保険適用により大きく増加したことが考えられます。小児科や耳鼻咽喉科ではコロナによる外来受診の増加や、診療報酬の加算などにより診療単価が増加したことが考えられます。

表 診療科別医療費の推移(医科入院外_診療所)表 診療科別医療費の推移(医科入院外_診療所)

表 診療科別医療費の伸び率(医科入院外_診療所、対前年度比%)

表 診療科別医療費の伸び率(医科入院外_診療所、対前年度比%)

都道府県別の平均在院日数

2022年度の推計平均在院日数を都道府県別に見ると、全国平均は28.9日でしたが、最長は高知県の41.6日(前年度に比べて0.7日短縮)で、最短の東京都の23.1日(同0.5日短縮)と比べると
18.5日間の差異があります。現在医療圏毎に必要な医療提供体制や病床数を協議する地域医療構想が進められていますが、都道府県単位でみる限りは医療の平準化が進んでいないことがわかります。

図 都道府県別の推計平均在院日数図 都道府県別の推計平均在院日数

まとめ

今回発表された医療費は、速報値であり、労災・全額自費等の費用を含まないことから概算医療費と呼ばれています。概算医療費は、医療機関などを受診し傷病の治療に要した費用全体の推計値である国民医療費の約98%に相当しており、実際にかかった医療費は47兆円程度に達すると見込まれます。
ここ2年間の医療費はコロナの影響による増加を考慮する必要がありますが、概算医療費は毎年数千億円増加しており、数年後には50兆円に達することが予想され、増え続ける医療費をどのように適正化していくのかという課題は、製薬業界にとっても非常に重い課題になっています。

執筆者紹介

塚前 昌利
塚前 昌利
株式会社ベルシステム24 
第1事業本部 営業企画部 マネージャー
外資系製薬企業にて、MR、プロダクトマーケティング、メディカルアフェアーズを経験後、医療系出版会社などを経て、2013年より現社にてマーケティング業務を担当。
業界経験を活かし、アウトソーシングの立場で、製薬企業の市販後サービスを中心に様々なニーズを踏まえた、最適なソリューションの提案、コンサルティング等の業務に携わる。診療報酬、医療制度、医薬品適正使用、情報提供のあり方等をテーマに業界誌に多数執筆、企業等での外部セミナー講師も担当。
公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会・認定登録コンサルタント
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