ウェルネスとは? 意味や関連する分野など基礎をまとめて解説
- 2022.05.10
- 健康維持・増進
- ウェルネスの空 編集部
「ウェルネス」というキーワードは、ビジネスや普段の生活に登場することが多くなりました。しかし、ウェルネスの概念を確実に把握している人は少ないのではないでしょうか。
ウェルネスは「健康」をより広く捉え、幸福な生活を送るための手段として注目されています。本記事では、ウェルネスの概念やヘルスとの違い、ウェルネスを満たす領域、「ウェルネスライフ」や「ウェルビーイング」などの派生したキーワードについて解説します。
新しい健康指標「ウェルネス」の意味とは?
「ウェルネス(wellness)」とは、毎日をよりよく生きるための健康維持・増進に向けた生活態度全般を指し、「健康」をより広く捉えた新しい概念です。1961年に、アメリカのハルバート・ダン博士が「輝くように生き生きしている状態」と提唱したことから始まり、世界中の研究者がさまざまな解釈をしてきました。その時の社会環境や、人種、国家、性別、宗教などにより、ウェルネスの概要も変化し続けています。
昨今、ウェルネスの定義として、肉体的な健康だけでなく、精神的な健康も提唱され始めました。また、職業や社会的地位、環境など、ウェルネスの指標は多岐に渡り、さまざまな産業・業界で取り入れられているのです。
世界保健機関(WHO)でも、「健康」の定義として「肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」としています。このことからウェルネスは、病気の有無だけでなく、生活の質(Quality of Life)が高い状態にあるということが求められます。
肉体的にも精神的にも健康で、生き生きとした生活を送るための目的や手段として、ウェルネスが注目されています。
今後日本で進行する超高齢化社会に向けて、幅広い年代で意識すべき、重要な概念です。
ウェルネスとヘルスはどう違う?
多くの辞書ではウェルネス(wellness)の和訳が「健康」となっており、ヘルス(health)と混同されやすい側面があります。ヘルスとは、「病気ではない健康な状態」を指す言葉として使われることが多く、豊かで生き生きとした生活を営むためになくてはならないものです。一方、ウェルネスは「病気ではない」というだけに留まらず、健康に対する価値観をより広く捉えたものと言えます。
身体や精神の健康、社会的な健康である「ヘルス」は、生き生きとした豊かな人生を歩むための「基盤」です。そして、その「基盤」をもとに設計する、自己実現の目的に向けたプロセスが「ウェルネス」と言えるでしょう。
ウェルネスを満たすべき4つの領域
世界保健機構(WHO)憲章では、「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱が存在しないことではない。到達しうる最高基準の健康を享有することは、人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一つである」とされています。
ここでは、ウェルネスの提唱者が参考にしたとされる上記のWHO憲章から、ウェルネスが関連する4つの領域を解説します。
1. 感情・知性・認知能力など精神的な領域
感情や知性、認知能力といった精神的な領域のウェルネスです。精神的なバランスを保ちながら感情をコントロールし、ストレスにうまく対処することは、脳卒中や心臓病のリスクが減るとも言われています。また旅行や映画の趣味など、興味のある分野への探求心も、知性や認知能力のウェルネスが満たされる要素のひとつです。
自身の精神状態と向き合い、これらの精神的な領域を満たすことで、健康促進や病気予防、生活習慣の改善にも効果が期待できるでしょう。また、WHO憲章でも「健康を完全に達成するためには、医学、心理学や関連する学問の恩恵をすべての人々に広げることが不可欠」としています。
感情、知性、認知能力など精神的な領域は、年齢を重ねるたびに意識すべき、重要なウェルネスです。
2. 身体の健康など肉体的な領域
「病気ではない」という身体的な健康にかかわる領域のウェルネスを満たすことも重要です。ただ「病気ではない」という状態を保つだけでなく、病気にならない予防(1次予防)や病気の早期発見(2次予防)、病気を悪化させない(3次予防)が求められます。
これには、定期的な健康診断はもちろんのこと、ウォーキングや軽い運動など、健康維持・増進に向けた自発的な行動が当てはまるでしょう。また、生活習慣病の予防に向けた、飲酒や喫煙の制限や食習慣の改善、十分な睡眠をとることもこの領域に含まれます。
3. 職業・経済面など社会的な領域
仕事を通して人生の意義を見出したり、家族や友人などとの交流で良好な関係を築いたりするなど、社会的な領域のウェルネスを満たすことも理想です。職業のウェルネスが満たされている人ほど、生活の質が高い傾向があります。また、他者との良好な人間関係により自身の価値を見出すことができるなど、人との関わりを通して、社会的孤立を防ぐ行動も重要な要素です。
WHO憲章では、「人種や宗教、政治信条、経済的・社会的条件によって差別されることがない」状態が求められており、基本的人権のひとつであると唱えられています。社会的領域のウェルネスを満たすことで、充実した人生を送ることができるでしょう。
4. 自身を取り巻く環境的な領域
環境的な領域における「環境」とは、生活環境や職場環境、社会的環境など自身を取り巻くさまざまな環境を言います。自身が置かれた環境によって引き起るストレスは、高血圧やうつ病などのリスクが伴うこともあるのです。一方で、ストレスを避けるために社会的環境から離れてしまうと、孤立し、別の疾病を引き起こしかねません。環境によってかかるストレスを、バランスよく適度にコントロールすることが求められます。
WHO憲章では、「世界全体における健康増進と保護」が求められており、各国政府は、国民の健康を守るための環境づくりが必要であると定義されています。このことから、環境的な領域はウェルネスを満たすために、重要な要素であると考えられているのです。
ウェルネスが生かされる分野や業界
ウェルネスの意識が急激に高まっている昨今では、会社経営や医療業界、スポーツ、美容などのあらゆる分野で、ウェルネスの概念が取り入れられています。ここでは、それぞれの分野におけるウェルネスへの取り組みを解説します。
ウェルネスと経営・会社づくり
経営や会社づくりに、ウェルネスの概念を取り入れる企業が増えています。企業における「ウェルネス経営」とは、企業成長の構想として、従業員の健康管理を数値化して管理するなどの経営方針のことです。
健康に不安を抱えた従業員は生産性が低下し、離職も増える傾向にあります。従業員が生き生きと働ける環境を整えるためには、クリニックと提携した健康診断など、国が推奨する「健康経営®」を重視することが重要です。
このように、ウェルネスと経営を結び付けることで、従業員の生産性の向上や離職率の低下に繋がります。また、継続することで、最終的には企業の利益になるでしょう。
さらに、ウェルネスをビジネスとして活用する、「ウェルネスビジネス」を取り入れる業界も増えています。ウェルネスの概念は、多くの企業に影響を与えているのです。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
ウェルネスと医療
ウェルネスは医療業界にも広がっています。2018年には、ウェルネスが看護学の国家試験に新たな項目として追加されました。医療・看護領域におけるウェルネスの視点は、患者に対する健康維持や健康増進、疾患の予防、未病への対応などです。病気の問題点だけでなく、より良い健康状態を目指すための視点が必要となります。
看護領域では、特に母性看護や老年看護と相性が良く、ウェルネスは重要な役割を担います。また、地域の薬局でも健康相談を行うなど、ウェルネスの概念は医療の広い領域で活用されているのです。
ウェルネスとスポーツ・美容
多くの産業が参入しやすいウェルネスの概念ですが、スポーツ分野や美容業界でも取り入れられています。特にスポーツは、病気の予防だけでなくストレス解消や抗不安・鎮静作用など、生き生きと幸福感のある生活に向けた健康増進効果が期待できるでしょう。また、スポーツジムやフィットネスクラブに通うことで、安全で適切な運動機会を定期的に得ることができます。
ウェルネスに含まれる自己実現の概念は、自分らしく前向きに、自分を高めることです。このことから、進んで行うスポーツや運動、さらに美容とも相性が良いと言えるでしょう。また、病気の治療目的ではない、健康維持や健康増進、さらには美しくなりたいという目的に向けたサプリメントの活用も、ウェルネスの一環として効果的です。
ウェルネスと関連が深い2つのキーワード
ウェルネスと関連の深いキーワードに「ウェルネスライフ」と「ウェルビーイング」があります。「ウェルネスライフ」は自身と向き合う手段として、「ウェルビーイング」は社会全体におけるさまざまな要素が加わった、より長期的なウェルネスとして注目されています。ここでは、この2つのキーワードについて解説します。
自分を見つめ直す「ウェルネスライフ」
変化の多い社会を生きる現代において、自身の心と身体を整えて過ごすことは、多くの人にとって重要な課題です。その中で注目されているのが「ウェルネスライフ」です。
生き生きと幸福感のある生活に向けて、必要なもの、必要でないものを取捨選択し、自分を見つめ直す機会を持つことが重要です。「ウェルネスライフ」の基本は、自分を愛し、自分にとっての幸せや喜びを見出すこと。働くことで身体を壊したり、精神を病んでしまったりしては元も子もありません。
豊かな人生を歩むためには、「健康」が基本です。その「健康」を目的とした「ウェルネスライフ」を過ごすことが現代社会において大切なことです。目的意識をしっかり持ち、自ら進んで行動することが「ウェルネスライフ」の重要なカギになります。
自分に自信を持ち、自分を愛し、自ら育てていくことで、より良い「ウェルネスライフ」を送ることができるでしょう。
幸福を継続させる「ウェルビーイング」
「ウェルビーイング(well-being)」の直訳は「幸福」や「健康」です。一見、ウェルネスと同じ意味合いですが、「well」に「being」が追加されることで、継続的な要素が加わります。そのことから、「ウェルビーイング」は健康かつ幸福な状態が続いているという意味に捉えられるでしょう。
「ウェルビーイング」は、健康に直結する医療領域だけに留まらず、キャリアや資産、人間関係、働き方などさまざまな要素がかかわってきます。また、国際目標である「SDGs(エスディージーズ)」の17項目の中でも、3つ目に「すべての人に健康と福祉を」の項目があることから、「ウェルビーイング」の概念が注目されているのです。
「ウェルビーイング」の高まりは、2019年から行われている「働き方改革」、さらには「新型コロナウイルス」によるリモートワークの増加も背景にあります。また、今後さらに進む「少子高齢化」における企業の「人材確保」にも、ウェルビーイングの考え方が必要とされるでしょう。
「ウェルネス」と「ウェルビーイング」。ウェルネスの概念をさらに長期的に見据え、幅広い分野で「幸福度」を実現するウェルビーイングの概念は、社会全体に多くの良い影響を与えるでしょう。
まとめ
ウェルネスとは、健康という目的を広く捉え、幸福で生き生きとした生活を送るための手段です。肉体的な健康だけでなく、感情や知性、職業、社会的地位、取り巻く環境に至るまで、ウェルネスの概念は多岐に渡ります。
ウェルネスの概念は、取り入れやすいという特徴から、医療だけに留まらず、企業経営やスポーツ・美容の分野など、幅広い分野・業界で活用されています。
また、自身を見つめ直す手段としての「ウェルネスライフ」や社会全体の幸福を継続する「ウェルビーイング」も注目されています。
このように、ウェルネスは健康から始まる個人の幸福、社会全体の幸福に欠かせない概念であり、実行すべき手段と言えるでしょう。
よりよく生きるための健康を考えるポータルサイト「ウェルネスの空」は、日本のより良い健康を世界に届けるため、ウェルネスに関する情報やサービスを展開しています。
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