特定保健指導が第4期から変わる? 2024年度からの変更点を解説

近年、健康経営推進はあらゆる企業にとっての重要な課題となっています。本記事では、その一環として重視されている特定健診・特定保健指導について、概要からポイント、令和6年(2024年)から開始される第4期における変更点について解説します。従業員の健康管理・増進に向けて、ぜひ参考にしてみてください。

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第4期特定保健指導とは?

「特定保健指導」とは、医療保険に加入している40歳から74歳の方のために行われる保健指導を指します。
平成20年度(2008年)から始まった制度で、定期的な見直しを経て、第4期は令和6年度(2024年)に開始されます。
特定保健指導は主に、特定健診(特定健康診査)によって生活習慣病のおそれがあると判断された被保険者に対して行われるものです。生活習慣病は、日々の睡眠不足や偏食、運動不足、ストレスなどが原因となって起きる病気の総称で、がんや心臓病、脳卒中などが該当します。これらは、日本人の死因で上位を占めているものです。
なお、特定健診の内容は、次のような項目が挙げられます。

  • 身体測定(身長、体重、BMI、腹囲)
  • 血圧測定
  • 血中脂質検査(中性脂肪、HDL・LDLコレステロールなど)
  • 血糖検査(空腹時血糖やHbA1c)
  • 肝機能検査(AST、ALT、γ-GT)
  • 尿検査(尿糖、尿蛋白)

引用元:「図表 2:基本的な健診の項目」9ページ

腹囲が男性で85cm、女性で90cm以上の場合は「内臓脂肪肥満型」となります。さらに「血圧」「血糖」「脂質」などの危険因子が2つ以上加わった場合は「メタボリックシンドローム」と診断されます。
メタボリックシンドロームに該当する人やその予備軍とされる人を少しでも減らすためには、日々の生活習慣見直しが欠かせません。特定保健指導は、各保険者によって実施計画策定が進められ、定期的に実施されています。

参考:「特定健診・特定保健指導」って? 政府広報オンライン
参考:特定健康診査等実施計画作成の手引き 2023年3月 厚生労働省

原則1回行われる動機付け支援

特定保健指導を進めるには、まず保険者が被保険者の行動計画書を作成します。行動計画書には、日々の生活で改善すべき点を盛り込みます。被保険者が生活習慣を見直し、改善に向けて行動できるようにサポートするのが大切なポイントです。
計画書が用意できれば、原則1回、被保険者へ行動の目的などを伝え、動機付けを行います。

継続的に行われる積極的支援

動機付けが終わったからといって、それで完了ではありません。日々の乱れた生活習慣を改善しない限り、健康状況は悪化の一途をたどってしまいます。そこで生活習慣改善に向けて、保険者は行動計画表を作成し、3ヵ月以上にわたりメールや電話を活用して対象者とやり取りを進めます。
なお、行動計画を作成する際には、厚生労働省から令和5年(2023年)3月に発出されている「特定健康診査等実施計画作成の手引き(第4版)」を参考にするのがおすすめです。

参考:「特定健康診査等実施計画作成の手引き(第4版)」

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第4期特定保健指導から実施される変更点

先に述べたように、特定保健指導は令和6年(2024年)から第4期が開始されます。変更される主な点を3つ解説します。

アウトカム評価を新しく導入

これまでは、たとえば個別に保健指導面接を何分受ければ何ポイントといったように、時間と内容によってポイントが付与され、成果を測る仕組みでした。しかし、これでは本当に健康指導が活かされたかがよく見えません。
そこで導入されたのが「アウトカム評価」といった評価制度です。
アウトカム評価もポイント制ではあるものの、時間や内容ではなく、数値目標に対しての結果により評価されることになります。
たとえば面接を受けてからアドバイスどおり実践し、「腹囲2cm・体重2kg減」といった目標を達成したときにポイントが付与されるイメージです。つまり、ただ指導を受けただけではなく、成果が出てはじめて評価される仕組みとなっています。

ICTを活用した指導

ICTとは「Information & Communications Technology」の頭文字をとった略称で、いわゆる「情報通信技術」を指します。
デジタル技術の発達により、第4期からはICTを駆使することも大切だとされています。具体的には、遠方などに住んでいる対象者に対して、リモート指導を行うことなどです。
立地上、特定健診や指導を受けにくい人たちにもできるだけ平等に機会を与えられるため、健康増進サポートの幅が大きく広がります。

達成状況を見える化

特定保健指導を実施した結果、対象者の生活習慣を改善できたとします。そうした実例データを見て分析すれば、「何が決め手で生活習慣を変えられたのか」や「どのように目標を達成できたのか」が明らかになるはずです。すると、ほかの対象者のケースにおける指導指針にもなります。
令和6年(2024年)からは、こうした実例の分析による効果に期待し、「達成状況の見える化」を推進することになりました。
なお、分析する具体的な項目としては、次のようなものが挙げられます。

  • 行動変容指標の改善割合
  • 腹囲2cm・体重2kg減の達成割合
  • 喫煙者の禁煙割合 など

参照元:厚生労働省「特定保健指導の見える化について」

特定健診の変更ポイント

続いて、保健指導の元になる特定健診(特定健康診査)では、どのような変更点があるのかについて解説します。

喫煙と飲酒に関する質問内容を変更

メタボリックシンドロームの原因になりやすいのが、特に喫煙や飲酒です。
特定健診の変更点としては、まず喫煙に関して質問が細分化され、よりリスクを感知しやすくなりました。また、飲酒はその頻度を調査する質問があります。禁酒は禁酒でも、健康上飲めないケースがあるため、区別できるように「飲めない」などを加え、質問内容がきめ細かくなっています。

ほかにも、特定保健指導に関する質問内容が変更されています。従来は、「もしこういう機会があれば利用したいか」などの利用意思を問うものでした。一方、今回の変更では「これまでに指導を受けたことがあるかどうか」となり、指導介入に対するハードルが下がりやすくするような質問に変更されています。

健診項目の見直し

第3期の特定健診や特定保健指導に関する学会のガイドライン変更を踏まえ、健康診査(健診)の項目も見直されました。科学的知見の他、生活習慣病のリスクを軽減させるための対策の費用対効果を含めた改善となっています。

たとえば、従来、健診を受ける前には10時間以上の絶食が必要でした。
変更後は、空腹時以外で中性脂肪を測定する場合、食後3時間半以上経っていれば、中性脂肪による血中脂質検査が可能です。
こうした見直しにより時間的な制約が少なくなり、健診をより受けやすくなったことで、受診者が増えると予想され、生活習慣病の早期発見や改善につながります。

参照元:厚生労働省「第4期特定健診・特定保健指導の見直しに関する検討会(とりまとめ)6~7ページ
参照元:厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第 4 版)5~9ページ

まとめ

今や特定保健指導はメタボリックシンドロームなどの生活習慣病対策として、不可欠なものです。令和6年(2024年)から始まる第4期では、より成果に着目したアウトカム評価を採用したり、達成状況を見える化してICTを活用した指導が行われます。
また、特定健診では、問題になりやすい喫煙・飲酒に関する項目や健診項目などの見直しも行われます。
健康経営の重要性がますます重要視される現代社会では、特定保健指導をいかに実のあるものにするかが大切です。今回の見直しにより、従業員の健康指導はより具体的で実施しやすくなったと考えられます。変更点をしっかり確認したうえで、より効果的な健康管理に取り組んでいきましょう。


この記事の監修医師
竹内 想先生(名古屋大学医学部附属病院)

特定保健指導が導入されてから時間が経ち、徐々に浸透してきました。今後は実施だけではなく特定保健指導によってどのようにアウトカムが改善したかが注目される時代になってきますので、ICTを活用した「見える化」を勧めていくことが有益と考えられます。

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