会社で行う健康診断とは?検査内容や料金、従業員に周知すべき前日の過ごし方までを解説

企業は、従業員の健康診断を実施する義務があると法律で定められています。健康診断には種類があり、企業側はそれぞれ定められた時期、内容で適切に行わなければなりません。本記事では、企業の健康診断について、また、従業員の健康診断をスムーズに行うために必要な従業員の前日の過ごし方や当日、健診後の注意点について解説しています。

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従業員に対して健康診断を行うのは会社の義務

我が国が制定する「労働安全衛生法第66条」では、事業者は労働者に対して健康診断を行わなければならない旨が記載されています。労働者とは正社員に限らず、労働時間や契約期間が一定の要件を満たした契約社員、パート、アルバイトも含みます。

具体的に「労働安全衛生規則(以下、安衛則)第44条」で、常時雇用者を対象に1年以内ごとに1回、定期に決められた項目について医師による健康診断を行わなければならないこと、「安衛則第43条」で新たに雇い入れる者に対して、11項目について健康診断を行わなければならないことなどが示されています。

安衛則ではこのほか、深夜業や有害物質を扱う業務に携われる従業員に対して、半年に1回健康診断を行う義務についてそれぞれ定めています。健康診断を実施しなかったり、受診を怠った従業員がいたりすると法律違反とみなされ、50万円以下の罰金刑などが科されることがあります。
(参照元:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」

健康診断には「一般健康診断」と「特殊健康診断」がある

健康診断には大きく分けて「一般健康診断」と「特殊健康診断」の2種類があります。一般健康診断は5つに分類され、代表的な「定期健康診断」や「雇い入れ時の健康診断」のほか、「特定業務従事者の健康診断」「海外派遣労働者の健康診断」「給食従業員の検便」があります。

一般健康診断の中の「定期健康診断」は最も一般的な健診で、定期健診や一般健診とも呼ばれます。これは、毎年定期的に従業員の健康状態をチェックするものです。職種や勤務時間を問わず、すべての従業員を対象に、1年以内ごとに1回の実施が義務化されています。従業員の健康維持を目的として行うもので、自覚症状のない病気の早期発見にも役立ちます。

他方、特殊健康診断は、有害な物質を取り扱う業務に常時携わる従業員に対して実施しなくてはならない健康診断です。目的は、有害な物質が身体に影響を及ぼすのを未然に防止することです。法律で、高気圧業務や放射線業務をはじめ、特定化学物質、石綿、鉛、四アルキル鉛、有機溶剤を使用する業務は、有害業務であると定められています。これらに該当する従業員に対して、雇い入れ時、配置替え時のほか、半年以内ごとに1回行う必要があるのです。

特定化学物質と石綿に関しては、その業務から離れた従業員にも、引き続き半年以内ごとに受診させる義務があります。粉じん作業に従事する従業員または従事していたことのある従業員には、「じん肺健診」を、別に実施することがあります。

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会社が負担する健康診断の料金相場

労働安全衛生法では、健康診断の費用は会社が全額負担するべきであると定めています。また料金は保険適用外であることから各医療機関が設定し、受診の実施形式や医療機関によってさまざまです。

雇い入れ時の健康診断や定期健康診断の料金相場は、一人あたり5,000円〜15,000円です。特殊健康診断の相場は、検査の内容によっても差が出ますが、2,000円〜8,000円で設定されていることが多いです。一例を挙げると、被曝量などを検査する「電離放射線健康診断」と粉じんによる健康被害を調べる「じん肺健康診断」はそれぞれ4,000円程度となっています。

健康診断は、事前に医療機関に電話、メールなどで連絡を取り予約をしなければなりません。健診を受ける従業員の氏名・住所・希望するコースや日時などを伝えて予約すると、医療機関から受信に必要な書類や検便、検尿といった容器が送られてくるため、内容を確認します。健康診断は従業員全員が受けなければならないことから、健康診断の日時などを従業員に連絡しておく必要があります。

健康診断前日の過ごし方

企業側は、従業員に向けて健康診断の受診を促すだけではなく、万全な状態で受診するように周知徹底することも大切です。特に前日の過ごし方はあらかじめ注意事項を提示しておいた方がよいでしょう。

健診前日には、食事のとり方や飲酒、喫煙などに気をつける必要があります。前日の食事は21時(健診の10時間前)までに済ませることが大切です。健康診断が午前中の場合には朝ごはんも抜いたまま健診を行います。午後からの健診では軽い朝食を食べても大丈夫ですが、昼食は食べられません。健診前日には、胃に残らない消化の良いメニューを選んで早めに食事を済ませましょう。

バリウム検査がない場合は、前日当日に水や無糖のお茶をいつも通り飲んでもかまいません。バリウム検査があるときの飲み物には水を選び、検査2時間前からは飲み物も控えます。

特に影響が出やすいのは血液検査です。前日に高カロリーな食事や飲酒をすると、血糖値や中性脂肪の値が上昇する可能性が高くなってしまいます。血液検査は空腹状態で行うのが好ましいため、採血の10時間前を目途に食事を済ませておくことが重要です。また、消化に悪い食べ物が胃に残っているとX線撮影やエコー検査で影響が出ることから、食事の内容にも気を使って正しく検査する必要があります。

もし持病の薬を飲んでいる場合には、前日に薬を服用しても基本的には問題ありません。当日は、健診終了まで薬の服用を控えられるといいのですが、症状により飲まなければならない薬の場合は、少なめの水で飲むように伝えます。医療機関によって当日服用可能な薬の種類が異なるため、あらかじめ持病の薬を服用している従業員を把握して医療機関に確認しておきます。

前日には、アルコールによる肝機能の低下が検査結果に影響するため飲酒を控えることも従業員に伝えなければなりません。喫煙でニコチンが体内にある状態は胃液の分泌を増やしてバリウム検査の妨げになるため注意が必要です。血管の収縮作用で血圧を高める場合もあることから、前日の喫煙も避けるのがおすすめです。健診の8時間前までは喫煙可能とされていますが、前日からの禁煙を勧めている医療機関もあるため、予約時に前日の喫煙について忘れずに確認しておきます。

食べ物や飲み物といった口にするもの以外に、激しい運動や睡眠不足が診断結果に影響を与える可能性もあります。健診前日にスポーツなどで激しく体を動かすと、肝機能検査や尿検査の結果が正しく出ないケースがあるかもしれません。デスクワークなどで普段からあまり体を動かしていない人の場合は、軽い運動でも検査結果に影響するケースがあります。健診前日と当日には、普段行っているウォーキングやランニングもお休みした方が安心です。

睡眠不足のときにも、尿検査や血液検査の数値に問題が生じるケースがあるため、前日はできるだけ7時間以上睡眠をとることも大切です。女性の場合、生理のときには尿検査の潜血検査が受けられず、子宮がん検診は延期になるケースもあります。

健診前日の過ごし方については、正しく検査を受けるためにも事前に従業員へ周知徹底しておかなければなりません。

金具や装飾など診断時の服装も注意

健康診断当日は、服装にも注意が必要です。レントゲンの撮影時は金属がNGであるため、女性においてはワイヤーやホックのついたブラジャー、男性は金属のアクセサリーや刺しゅうが装飾された服を避けるように注意します。無地のTシャツなど、ゆったりして着脱しやすい服装がおすすめです。

視力検査ではメガネを使っている従業員が着用時の視力も計ります。医療機関によってはコンタクトレンズを外して視力を計るケースもあるため、ケースや洗浄液の持参についてお知らせしておく必要があります。スムーズに受診できるように、前日の過ごし方とともに当日の注意点も事前に知らせておきましょう。

健康診断の検査項目 

一般健康診断の「雇い入れ時の健康診断」と「定期健康診断」では、11項目を検査することが定められています。「既往歴及び業務歴の調査、自覚症状及び他覚症状の有無の検査、身長・体重・腹囲・視力・聴力の検査、胸部X線、血圧測定、尿検査、心電図検査、肝機能検査、血糖値測定、血中脂質検査、貧血検査」です。雇い入れ時の健康診断では、これらすべての項目を検査する必要があり、定期健康診断では医師が不要だと認めた場合に限り身長、腹囲、胸部エックス線検査などを省略できます。

特殊健康診断の検査項目は、業務ごとに異なりますが、基本的には「業務経歴の調査、有機溶剤業務による既住歴、自覚症状の有無、有機溶剤の使用による症状の有無、尿中タンパク質の有無、尿中の代謝物の検査、肝機能検査、貧血検査、眼底検査」を行います。特殊健康診断にはさまざまな種類があるため、従業員一人ひとりの作業内容や作業環境に合わせて適切な健康診断を行う必要があります。

この特殊健康診断を適切に実施するためには、現場で取り扱っている物質や薬剤などについて、社内で厳重に管理しておくことも大切です。有機溶剤の使用をしている会社については労働基準監督署がより厳しく指導を行っているため、特に注意が必要です。

健康診断の結果

健康診断の結果は、通常だと1〜2週間、混雑期は1ヶ月程度で会社に送付されます。企業は所見の有無に関わらず、受診者に対して結果を通知する義務があるため、できるだけ早く従業員の手元に届くようにします。なお、健診結果を本人の承諾なく確認することは個人情報保護法で禁じられているため、取扱いには注意しましょう。

結果の保存期間

定期健康診断の場合、診断結果は5年間保存しなければならないと定められています。じん肺健康診断だと7年間、石綿健康診断では40年間などそれぞれ保管年数が異なります。

健康診断の結果は、原本かコピーを紙のまま保管してもよいですが、ペーパーレス化がおすすめです。従業員ごとに、電子データでストレスチェックの結果や産業医との面談記録、診断書とともに保管しておくとわかりやすいでしょう。これらの管理はなるべく小人数で行い、閲覧できる産業医や保健師、会社の専任者など以外の目に触れないよう厳重に管理することが重要です。

必要に応じて健康診断の再検査を行う 

会社は従業員の健康を管理する義務があるため、異常所見があった従業員には、必要に応じて再検査をすすめます。労働安全衛生法では、努力義務として二次健康診断の受診勧奨や産業医や保健師などによる保健指導が明記されています。健康診断から3ヶ月以内に産業医や保健師の意見を聞き、就業上の処置を行うことも大切です。通院や治療による勤務を制限が必要な場合は、休業や勤務時間の短縮、就業場所の変更などの措置を取らなければなりません。

まとめ

企業は、「労働安全衛生法第66条」によって従業員に対して健康診断を実施するように義務付けられています。健康診断には一般健康診断と特殊健康診断があり、常時雇用する従業員に定期的な健康診断を実施するほか、雇い入れ時や有害物質を取り扱う業務など必要に応じて健康診断を受診するように促す必要があります。また、従業員が正しく検査を受けるための働きかけや診断結果の通知・保存といった適切な管理、従業員に対する再検査への誘導も行わなければなりません。産業医や保健師の意見を聞き、検査により健康状態に問題がみられた従業員の通院や治療勧奨、勤務状況の変更などの措置も必要です。

企業が従業員の健康について取り組むことは働きやすさの向上や離職率低下にもつながり、ひいては企業の成長や魅力を高めることにつながります。

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