ウェルネス経営の実現に向けてクリニック提携のすすめ
- 2022.05.06
- 健康維持・増進
- ウェルネスの空 編集部
働き方改革や新型コロナウイルスの影響などにより、ウェルネス経営への注目が高まっています。ウェルネス経営について、どのようなメリットがあるのか、実際に導入するには何をする必要があるのかといった内容をまとめました。ウェルネス経営について知りたい方、ウェルネス経営の実践を考えている方は参考にしてください。
ウェルネス経営とは
導入する企業が増えてきているウェルネス経営は、組織にとっての資源である人材の価値を高め、生産性向上を目指す取り組みです。ウェルネス経営とはどういうものか、詳しく説明していきます。
まずはウェルネスについて説明
ウェルネスとは、心身ともに豊かで満たされた状態にあること、またはそうした状態を目指す生き方を指します。単純に体が健康であるだけでなく、心の状態、周囲の環境なども含め、より良く生きることを目標とするのがウェルネスです。
体に病気など異常がなくても、心が落ち込んでいたら、満たされた状態にあるとは言えないでしょう。ウェルネスを実現するには、「体に異常がない=元気、健康=問題なし」で済ませず、生き生きと毎日を過ごせるようなライフスタイルを作り上げていくことが大切です。
そのため、ウェルネスは体や心の状態に加え、社会的な要素にも注目します。周囲の人との関係、生活や労働環境なども考慮し、問題があれば改善して、「豊かである」「満たされている」と感じられるような生き方を実現していきます。
企業成長と社員の健康を増進するウェルネス経営とは
従業員の健康を守り、十分に実力を発揮できる環境を整え、企業の成長につなげていくのがウェルネス経営です。健康目標を具体的な数字にして設定し、従業員の身体的・精神的状況、人間関係、労働環境などの改善に努め、どれだけ実現できたかも数値化します。
企業戦略のひとつとして、従業員がより良く生きること、豊かで満たされていると感じることを実践していく、とも言えるでしょう。経済産業省もウェルネス経営とほぼ趣旨が共通する「健康経営®」を推進しており、優秀な企業を認定して顕彰したり、優良な投資銘柄に選定したりする活動を行っています。
ウェルネス経営が注目されるようになった背景には、少子高齢化による人手不足、技術の進歩、ライフスタイルの多様化などにより、業務効率化が重視され始めたことがあります。
加えて、近年は新型コロナウイルスの影響を受け、感染症予防やリモートワークに伴うストレス・運動不足対策に取り組む企業も増加しています。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
ウェルネス経営導入のメリットとは
端的に言えば従業員の健康を守り、促進するウェルネス経営は、導入することで生産性の向上、企業イメージアップといった効果が期待できます。ウェルネス経営を行うメリットを具体的に紹介します。
業務の効率化
疲れているときや体調が悪いとき、精神的に参っているときなどは仕事の質が低下してしまいがちです。ウェルネス経営を導入して従業員の健康を心身ともに保つことで、仕事が効率的に進むようになり生産性の向上も期待できます。
また、身体的・精神的ストレスを低減させることは、従業員を病気にかかりにくくすることにつながり、長期の欠勤を防ぐことに寄与します。欠勤は他の人にしわ寄せがいき、過剰な業務を担当せざるを得ない状況になりがちで、さらに労働環境を悪くするスパイラルに陥ってしまう可能性があります。健康な職場の維持こそが、業務効率化の第一歩と言えるでしょう。
離職率の低下
従業員が健康を損ねて離職してしまうリスクを低減できるのも、ウェルネス経営導入のメリットです。ウェルネス経営は、従業員の体に限らず心の健康も守るため、単純に病気による離職を防ぐだけにはとどまりません。
離職理由として多く挙げられているのは、労働条件や待遇、職場の人間関係などです。また、成長を実感できず、やりがいを見いだせずに離職してしまうケースも報告されています。
ウェルネス経営はこうした社会的環境も含め、従業員の健康保護を目指します。ストレスの低減、モチベーションのアップなどにも取り組むことで、従業員の離職率低下が期待できます。
さらに、離職率を抑えられると、従業員を大切にしているという印象を与え、企業のイメージアップにもつながります。求職者へのアピールにもなり、さらに優秀な人材が集まりやすいというメリットもあります。
クリニックと連携してウェルネス経営を実現させる
健康診断や食生活へのアドバイス、ストレスケア、フィットネスサービスなど、ウェルネスのサービスには様々なものがあります。従業員の心身状態を把握し、必要があれば迅速に改善できるよう働きかけるには、医療機関と連携することが有効な方法です。
ウェルネスのサービスを抜粋して紹介
ウェルネス経営に取り組む企業では、従業員への健康診断に加え、食生活改善のための食事アドバイス、体重管理、ストレス管理、禁煙サポートなどが実施されています。
ほかには、仮眠室の設置や、フィットネスサービスの提供も行われています。なかには、休憩扱いにすることなく、業務時間内に仮眠や運動ができる体制を作った企業もありました。
また、残業の削減や有休取得率アップに取り組んだり、出勤日や就業時間を自由に決められる制度を作ったりして、従業員の私生活充実を図るケースも報告されています。
連携クリニックを選定する
従業員の健康問題を可能な限り未然に防ぐには、医療機関と連携することをおすすめします。定期的な体調やストレスのチェックができるだけでなく、健康診断の結果などをもとに、従業員へ必要なサポートをスムーズに行えるからです。
常に50人以上の従業員がいる企業は産業医を選任する義務がありますが、50人に満たない場合もクリニックと連携しておいた方が良いでしょう。
ちなみに産業医とは、企業の従業員に対する健康指導や支援を担当する医師のことです。産業医を探すには、都道府県医師会や郡市区医師会に相談したり、人材紹介会社を利用したりする方法があります。
産業医を選ぶ際には、企業側の希望をはっきりさせておくことで、選定がスムーズに進みやすくなります。たとえば、ストレスケアに力を入れたい、社内に空きスペースがないためクリニックで面談を受けさせて欲しいなど、産業医に何を望むか明確にしておきましょう。
企業におけるウェルネスの導入事例を紹介
ウェルネス経営を導入した企業は、具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。いくつか事例を紹介します。
信頼は社員の健康から! 健康診断受診率100%の継続
株式会社資生堂は、化粧品事業を中心に、美容室やレストラン事業も展開している企業です。ウェルネスに関しては、資生堂健康宣言と題し、従業員やその家族が健康的に生活するための取り組みを行っています。
たとえば、健康診断受診率100%という状態を継続させ、必要に応じて再検査の推奨や検診費用の補助を行うことで、病気の早期発見・治療の実現を目指します。ほかにも、食事や運動に関するセミナーや健康フェア、社内禁煙デーなども実施しています。
心身の健康のために専属産業医面談を実施
メディア事業やインターネット広告事業などを手がける株式会社サイバーエージェントは、従業員の心身の健康促進を目的とし、健康推進室を立ち上げました。勤務時間のモニタリング、リモートワークと出社勤務の併用、医務室の設置といった施策を行っています。
メンタルヘルスケアに関しては、専属の産業医面談に加え、希望者はカウンセラーの面談を受けることも可能です。特に、新入社員は全員、初年度に2回、カウンセラーによるヒアリングを受けられます。
社員の健康は財産! 健康経営優良法人(ホワイト500)に認定
ウェルネスに対する実践が評価され、認定を受けた企業もあります。情報通信ネットワークを提供するNTTテクノクロス株式会社は、従業員の生活習慣・食生活の改善対策、ストレスチェック、血管年齢測定や姿勢測定イベントの実施などを行ってきました。
従業員の心身の健康をサポートし、健康に対する意識も高められるような取り組みにより、健康経営優良法人(ホワイト500)に認定されました。
健康経営優良法人とは、健康経営を実践している優秀な企業が受けられる認定です。大規模法人部門と中小規模法人部門に分かれており、大規模法人部門の中で上位の企業だけが「ホワイト500」として認定マークが付与され、広告や求人に使用することができます。
まとめ
効率的に業務を進め、生産性アップを図るには、従業員が心身ともに健康であり、満たされている状態にあることが大切です。人材を大切にするウェルネス経営は、導入することで企業価値の向上が期待できると言えるでしょう。
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