23年度健康経営優良法人、認定基準変更のポイント
- 2022.11.09
- 健康維持・増進
- ウェルネスの空 編集部
8月22日、経済産業省は健康経営®優良法人2023の申請受付を開始しました。ここでは健康経営優良法人認定制度の前年度からの認定基準の変更ポイントや、大規模法人部門の認定に必須である健康経営度調査の前年度からの変更ポイントについて解説します。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
健康経営優良法人認定制度とは
健康経営優良法人認定制度は、従業員の健康管理や健康増進の取り組みについて、特に優良と認められた法人を認定することを目的に、2016年に創設されました。制度の主幹は経済産業省で、日本健康会議が認定します。特に優れた企業として、大規模法人部門認定法人のうち上位500法人を「ホワイト500」、中小規模法人部門認定法人のうち上位500法人を「ブライト500」として認定します。また、大規模法人では、経産省が実施している健康経営度調査に回答する必要があり、調査が制度認定の登竜門となります。
健康経営優良法人2023の前年度からの変更ポイント
申請窓口を変更・申請が有料化
これまで経産省が制度を主幹してきましたが、健康経営の更なる普及に向け、民間事業者の創意工夫を活かした認定制度の運営を行う観点から、今年度から民間の運営主体に対して補助金を交付する運用方法に変更され、株式会社日本経済新聞社に運用が委託されました。
日本経済新聞社は、健康経営に関する情報を幅広く発信していくため、健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト「ACTION!健康経営(日本経済新聞社)」を立ち上げており、本サイトから申請を受け付けています。運用コストとして申請が有料化されています(認定申請料は大規模法人部門、中小規模法人部門でそれぞれ税込88,000円、16,500円)。
情報開示の促進
健康経営度調査フィードバックシートの項目に、経営層のコミットメントや施策のアウトプットに関する定量的な情報が追加されました。例えば、健康経営の推進に関する全社方針(企業理念や部署の方針等)を社内向けに明文化していない場合、健康経営優良法人として認定されないと判断されます。また、健康経営の推進に関して会社全体の目的と体制の両方を社外公開していない場合も不認定と判断されます。さらに、公開している場合は具体的にどのような媒体で公開しているかについても回答することが認定要件上必須とされています。
業務パフォーマンスの評価・分析
業務パフォーマンス指標を活用し、健康経営の効果の見える化を促進するため、アブセンティーイズム(傷病による欠勤)、プレゼンティーイズム(出勤はしているものの健康上の問題によって完全な業務パフォーマンスが出せない状況)、ワークエンゲイジメント(仕事へのポジティブで充実した心理状態)の経年変化や測定方法に関する開示状況に関する設問が追加されました。
健診受診やストレスチェックの実施といった健康経営の実践や、その結果の適正体重の維持や血圧リスクを下げるといった成果、つまりアウトカムに関するデータは健康経営度調査で収集されていますが、アブセンティーイズム、プレゼンティーイズム、ワークエンゲイジメントといった業務パフォーマンスに関するデータは今まで健康経営度調査では収集されていませんでした。しかし、政府の健康投資ワーキンググループは、健康経営の実践による従業員の業務パフォーマンスを評価・分析する必要があるとしており、今回からこれらの指標についても調査項目に加わっています。調査には、結果だけでなく測定方法、開示サイトの情報も求められており、将来的には業務パフォーマンスの分析や開示が必須となる可能性があります。
データ利活用の促進
健診情報やライフログデータ等のPHR(パーソナルヘルスレコード)の利活用に関する検討が進められており、従業員のヘルスリテラシーの向上を促すための取組として、健診情報などを電子記録として閲覧するための環境整備について評価が行われています。
また、効果的・効率的な保健事業の実施のため、企業等から保険者に対する「40歳未満の従業員の健診データの提供」についての設問が追加されました。
具体的には、健保組合保険者に健康診断のデータを提供しているかどうかに加え、データの提供形式についても問われています。また、データの提供について保険者に意思表示をしていない場合、健康経営優良法人として認定されないと判断されます。40歳未満の従業員に対する健康診断のデータ提供に関する設問も追加されていますが、今年度の評価には使用しないとされています。
なお、情報開示の促進、業務パフォーマンスの評価・分析は大規模法人が対象、データ利活用の促進は大規模法人・中小規模法人も対象となります。
上記以外の大きな変更点としては、健康経営銘柄の選定基準が、22年度までの「健康経営度が上位20%」の企業から、「健康経営優良法人の上位500位以内」と変更されています。
スケジュール
大規模法人部門では、健康経営度調査の回答締切りは22年10月14日まで、中小規模法人の申請受付締切りは22月10月21日までとされています。申請料金は22年12月9日までに指定の口座に振り込む必要があります。入金が遅れると認定審査が行われないので、注意が必要です。
全体スケジュールは「ACTION!健康経営(日本経済新聞社)」サイトをご覧ください。
まとめ
健康優良法人に認定されることで、▽社内的にみると、従業員が健康で生き生きと効率よく働くため、生産性や業績も向上が期待できる、▽社外的にみると、社員の健康に気を配っているという対外的な評価が高まり、働きやすい企業という評価が得られ、就職希望者の増加や優秀な人材確保につながる-等の様々なメリットが期待されています。
今後、人手不足が懸念される日本にとって、企業が健康経営に取り組むことは益々重要になってくることが予想されます。一方、これまでの流れをみると、健康経営優良法人取得のための認定要件も少しずつハードルが高くなっていくことが考えられ、毎年度の変更点や運用方法に注意を払う必要があります。
この著者の最新の記事
-
- 2024.11.22
- 予知・予防
病院が健康経営に取り組むメリットとは? 認定法人の...
-
- 2024.11.01
- 予知・予防
健康食品のECサイトの作り方は? 成功する構築ポイ...
-
- 2024.11.01
- 診断・治療
リモートディテーリングとは? 需要増加の背景、課題...
-
- 2024.10.21
- 診断・治療
Patient Centricityとは? 意味や...
この記事が気に入ったら
いいねしよう!