健康経営の取り組み事例とメリット、具体的な取り組み方

「健康経営」とは、経営戦略的な視点から従業員の健康を管理することです。従業員の健康を改善できれば、企業にとって健康保険料の負担が減るとともに、生産性向上も期待できます。この記事では、健康経営を実践している企業の事例や、実践の流れについて紹介します。自社で取り組む際には、ぜひ参考にしてみてください。

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健康経営とは何か? 認定制度や取り組み方法についても解説

健康経営に取り組んだ企業の事例

今や健康経営は、企業にとって重要な命題のひとつです。ここでは、各企業での取り組み事例を紹介します。

株式会社ベネフィット・ワン

福利厚生事業のほか、健康関連の事業を手がける同社では、従業員の健康教育に力を入れています。たとえば、「健康ポータルサイト」の活用によるさまざまな健康情報の発信や、健康診断の結果を経年管理することによる不調発見のスピーディー化です。従業員が定期的にサイトを訪れることで健康への意識はおのずと向上し、ひいては生活習慣病の抑止にもつながるでしょう。

また、働き方が多様化する中で表には出にくいメンタルヘルス対策として、従業員やその家族が抱える悩みへの相談を、24時間体制で受け付けています。

イオングループ

イオングループでは2016年度に「イオン健康経営宣言」を発表し、すべての従業員がいきいきと働けるよう、グループ一丸となって健康経営に取り組んでいます。

中でも注目されるのが「健康チャレンジキャンペーン」と「健康ポータルサイト PepUp」です。
まず「健康チャレンジキャンペーン」は、健康に関するさまざまなプログラムの中から、従業員が各自で選んだものに取り組む施策です。これに対して「健康ポータルサイト PepUp」では、40歳以上の従業員が健康診断の結果を常時確認できるほか、健康改善に向けたアドバイスをもらえます。また実際に改善できれば、WAONポイントに交換できる「健康ポイント」をもらえる仕組みになっています。
いずれも従業員にとってメリットを感じられる施策であり、高い効果を見込めるでしょう。

オムロン株式会社

大手電気機器メーカーである同社は、健康づくりを応援するために、「睡眠」「運動」「タバコ」「食事」「メンタルヘルス」という具体的な5つの指標を定めています。毎年重点的なテーマを決め、いくつ達成したかを見える化することで、従業員のリテラシー向上を図る取り組みです。

たとえば「睡眠」では、従業員が睡眠不足かどうかをデータで可視化し、一日の平均睡眠時間が6~8時間に収まっているかをチェックします。これは、睡眠不足が集中力を低下させるだけでなく、心身の調子を乱し、従業員の欠勤や休職、最悪の場合は退職につながりかねないリスクであるとの考えからです。

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健康経営に取り組むメリット

企業が健康経営に取り組むことで得られるメリットや効果には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは代表的な3点を紹介します。

リスクマネジメント

事業活動を進めていく中では、リスクを完全に避けては通れません。いわゆる「リスクマネジメント」とは、考えうるリスクの全体を組織的に把握・管理し、損失を可能な限り軽減することです。
健康上の問題をかかえた従業員が無理して働き続けると、突然の入院や死亡といった事態になりかねません。そうなると企業は、人材確保のための時間やコストを余計に費やすことになってしまいます。また、従業員の心身の不調を放置していると、思わぬ事故やコンプライアンス違反などの不祥事につながるおそれもあるでしょう。従業員の健康を守ることは、経営や企業イメージを守ることでもあります。

従業員の満足度向上

企業が従業員の健康管理を行うことで、従業員は無理して働き続けずに済み、ワークライフバランスを実現できます。いきいきと働けるようになれば、仕事へのモチベーションやエンゲージメントも上がるでしょう。健康経営で従業員の満足度を向上させることは、結果的に生産性アップや離職率の低下にもつながるわけです。

企業イメージの向上

経済産業省は、積極的に健康経営を実践している企業や法人を顕彰する「健康経営優良法人認定制度」を設けています。この制度によって優良法人に認定されれば企業イメージ向上が期待でき、金融機関や投資家など、ステークホルダーからの高い評価を得られるようになるでしょう。また、どの企業も人材不足がさけばれる中で、優秀な人材が集まりやすくなるのも大きなメリットです。
(参照元:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html

健康経営に取り組む具体的な手順

健康経営のメリットが理解できたとしても、実際にどのように進めていけばよいのか迷うこともあるでしょう。ここでは、健康経営を実践するにあたっての大まかな流れを、具体的に紹介します。

社内外に向けて健康経営に取り組む宣言をする

健康経営は、一部の部門だけが取り組むものではありません。まずは経営層がその重要性をしっかり理解し、自社のあるべき姿やビジョンを社内外に示すことが大切です。社内向けであれば、朝礼などの全体会議などで発表したり、社内報などのツールを用いて宣言したりするのが効果的です。社外に対してアピールするなら、プレスリリースや自社のホームページ、SNSなどをうまく活用するのがよいでしょう。

健康経営を実現するためのチームを作る

次に、健康経営を主導するメンバーでチームを作っていきます。メンバーは社内から選抜してもよいですし、外部から招くのもよいでしょう。また、チームは人事部に置くこともあれば、新たに専門部署を設けるケースもあります。
チームに健康管理の知識を習得させるには、健康管理に関する研修の実施がおすすめです。さらに医学的な専門知識が必要になれば、産業医や保健師、健康経営に特化したアドバイザーなどへ協力を仰ぐことで、より高いクオリティの健康経営を実現できます。

健康経営を妨げる社内の課題を洗い出す

チーム作りが完了したら、そのメンバーで健康経営のハードルとなっている社内の課題を洗い出していきます。
たとえば、従業員から収集した健康診断やストレスチェックの結果を踏まえた、自社が直面する課題の分析・明確化です。残業時間(労働時間)、休職者数や離職者数の推移などを分析していくとよいでしょう。その作業によって、部署や業種ごとの傾向も把握していきます。
ただ、リモートワークを導入していると、対面での確認が困難です。こうした場合は、アンケートをうまく活用し、「運動不足になっていないか」、「食生活が乱れがちになっていないか」などをチェックするとよいでしょう。

計画を立案し実行する

自社の取り組むべき課題の把握が済み次第、計画を立て、実行するフェーズに入ります。複数の課題がある場合、緊急性がより高いものや、従業員にとって抵抗感の少ないものから優先して実践するのがおすすめです。
よくある例としては、以下の方法が挙げられます。

  • 定期的な健康診断の受診を促し、受診率を上げる
  • ストレスチェックの結果から、職場の労働環境や業務量を見直す
  • 業務効率化システムの導入や従業員を増員する

ほかにも、以下のような取り組みは比較的すぐに実践できるため、早めに取りかかると効果も現れやすいでしょう。

  • 保健師から食事や運動について指導してもらう
  • 残業しない日を設定する
  • 休憩時間にストレッチや軽い体操をするように促す

まとめ

健康経営は、従業員本人のためだけではなく、企業のイメージや業績向上にもつながります。自社の課題やビジョンを明確化し、取り組みやすいものから始めてみるとよいでしょう。

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