ウェルネスを活かした会社の経営方法とは? 実施メリットや事例を解説

昨今、従業員のウェルネス(健康)ないしウェルビーイングに配慮した取り組みをすることが、企業にとっても重要になってきています。本記事では、こうしたウェルネス経営を実施する方法や、そのメリット、事例などについて解説していきます。

ウェルネスを活かした会社の経営方法とは? 実施メリットや事例を解説

ウェルネスまるわかりガイド 市場から経営メリットまで!

会社のウェルネス経営とは

ウェルネス経営とは、企業の経営戦略として、従業員の健康管理に取り組むことを意味します。そもそも「ウェルネス」とは、主に「健康」と訳される言葉ですが、健康とは単に身体面のことのみを意味するものではありません。たとえば日本WHO協会は、健康について次のように解釈しています。

「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます」
(引用元:https://japan-who.or.jp/about/who-what/charter/

つまり、ウェルネスを良好に保つには、定期的な運動や栄養に配慮した食生活、十分な睡眠時間とともに、周囲の人間や社会との良好な関係を築くことも大事になります。ウェルネス経営においては、従業員のこうしたウェルネス状態を管理しやすくするために、定期健康診断受診率や適正体重維持者率、喫煙率、運動習慣保持者率など種別に評価指標や目標を定め、その達成に向けて取り組んでいきます。

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ウェルネス会社が注目される背景

続いては、ウェルネス経営が現在注目されている背景についてご説明します。

働き方改革による職場環境向上

現在、日本では「働き方改革」が社会的に推進されており、企業は多様なライフスタイルを持つ従業員が働きやすい環境を整備するよう求められています。従業員の健康管理に積極的に取り組むことは、従業員が長く快適に働き続けるための職場づくりにつながります。このことから、ウェルネス経営は働き方改革の観点からも注目を集めているのです。

ストレスチェックの義務化

一定規模以上の企業に対して、従業員のストレスチェックが法的に義務化されたことも影響のひとつです。2015年の労働安全衛生法の改正によって、50人以上の従業員を擁する事業所には、ストレスチェックの定期的実施が義務づけられました。これは従業員が自分のストレス状態を把握することで、メンタルヘルスの不調を抑止する取り組みです。このストレスチェック制度の導入によって、従業員のメンタルヘルスケア、ひいてはウェルネス経営に関心を持つ企業が増加しました。

企業の競争力強化

ウェルネス経営が企業の競争力強化に貢献することが知られてきたのも、理由のひとつです。社会においてさまざまな面で多様化が広がる中、各従業員の能力を存分に活かすための環境づくりが重要になりつつあります。従業員の状態を多角的な面から良好に保つウェルネス経営は、従業員の職場満足度や仕事へのモチベーションを高める効果があることから、企業の競争力を強化させる施策としても注目を集めています。

ウェルネス経営を行うメリット

続いては、ウェルネス経営のメリットをご紹介します。

体調悪化を理由とする休職や退職を未然に防ぐ

ウェルネス経営によって従業員の健康増進を図ることで、従業員が心身の不調に悩まされることも減少していくでしょう。これにより、体調不良による従業員の休職や退職の発生を抑止し、人手不足やそれに伴う過度の業務負担などが起きにくく、安定した組織運営が可能になります。

医療費の軽減化

医療費の軽減効果もウェルネス経営のメリットです。2021年4月に健康保険組合連合会が発表した予算集計結果によると、大企業の健保の約78%が赤字になる見通しです。
(参照元:https://www.kenporen.com/include/press/2021/2021042202.pdf P3)

これは新型コロナウイルスの影響もあると考えられますが、少子高齢化が進み、従業員の高齢化が進めば、企業が負担する医療費は今後さらに増えていくことも予想されるでしょう。ウェルネス経営による従業員の健康増進は、この医療費の増大を抑制する効果も期待できます。

企業のブランドイメージ向上

ウェルネス経営はブランド戦略としても効果的です。ウェルネス経営に取り組むことで、自社が「従業員の健康や幸福に配慮している優良企業」だという印象を世間に与えることにもつながります。こうしたブランドイメージの向上は、消費者や求職者の好感を呼び、有能人材の確保などさまざまなメリットをもたらします。

ウェルネス会社の事例

続いては、ウェルネス経営を実施している企業の事例をご紹介します。

従業員の生活習慣改善に取り組んだ外食チェーン店

ある外食チェーン店は、2015 年にCWO(チーフウェルネスオフィサー)を設置し、ウェルネス経営宣言を行いました。そして店長を中心とした従業員を対象に、スマホアプリを通してヘルスケアの専門家から食生活や運動習慣のアドバイスを受けられるサービスを導入しました。こうした活動を通して同社では、肥満が指摘されていた多くの従業員の体重を10kg以上減量させることに成功します。また、それ以外の社員にもダイエットの意識が根づき、全社的な健康増進を達成しています。

ウェルネス部を立ち上げ体調管理を行ったインターネット関連会社

あるインターネット関連会社は、組織体制の中にコーポレートカルチャーディビジョンという良好な企業文化を築いていくための部門や、CWO職を設け、ウェルネス経営を促進しています。新型コロナウイルスの影響で多くの従業員が在宅勤務となる中、同社では従業員の運動不足や睡眠不足、体重管理などの課題が生じることが懸念されていました。そこで同社は、こうした課題に対処するためオンラインセミナーを実施したり、オンライン動画で毎朝ストレッチ方法を紹介したりするなどして、コロナ禍においても柔軟にウェルネス経営を促進しています。

ウェルネス経営における今後の課題

ウェルネス経営を今後進めていく際には、次のような課題やビジョンを見据えていくことが必要です。

健康寿命の重要性

ウェルネス経営を今後進めていくうえでは、健康寿命の重要性を深く理解することが欠かせません。健康寿命とは簡単にいうと、通院や介護の必要などなく、日常生活を営める健康レベルを維持できる(平均)年齢のことです。

新型コロナウイルスや少子高齢化などの影響により、企業・健康保険組合を取り巻く状況は従来から大きく変わりつつあります。つまり、従業員やその家族の健康という要素が、企業経営に大きな影響を与えるようになってきているのです。こうした状況を受け、今や多くの企業が健康経営の推進や、従業員のウェルビーイングの向上に注力するようになっています。現代では企業が従業員の健康維持や健康寿命の延伸に対し、積極的に取り組むことが必要になっているのです。

「健康投資」という考え方

ウェルネス経営を進める際には、「健康投資」という考え方を持つことが重要です。「従業員の健康を考える」というと、単に福利厚生の観点でしか捉えない経営者もいるかもしれません。しかし、本記事でも述べたようにウェルネス経営、ひいては従業員の健康は、企業経営にも実利的に大きな影響を与えます。つまり、ウェルネス経営やそれに要する施策は、企業の経営状態を成長させるための、一種の投資であると考えるべきなのです。

これに関連して、経済産業省は「健康投資管理会計ガイドライン」という資料を提供しています。ここには健康経営を企業が効率的に実施するための管理手法とともに、健康経営の取り組み状況について、外部と適切に対話するための考え方もまとめられています。また、このガイドラインには、健康経営の費用対効果を測るための金銭的・量的指標も提示されているので、ぜひ活用をおすすめします。

まとめ

ウェルネス経営とは、多角的な面から従業員のウェルネス(健康)増進を図る経営手法です。新型コロナウイルスのパンデミックや少子高齢化の影響もあり、その重要性は昨今、広く社会に認知されつつあります。

ウェルネス経営の促進は、人手不足の起きない安定的な組織づくりに役立ち、労働生産性や従業員エンゲージメントの向上、医療費の抑制などさまざまなメリットを企業にもたらします。実際に取り組むうえでは、こうした経営戦略上の利点も認識しながら、「健康投資」という考え方のもとで進めていくことが大切です。

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