健康経営のために欠かせない食生活改善のための施策とは

健康経営®の一環として従業員の食生活改善に取り組みたいと考えている企業経営者や担当者は少なくないはずです。従業員の健康は企業の利益に関わるため、適切な取り組みが求められます。本記事では、健康経営に欠かせない食生活改善の施策について解説します。

※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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健康経営とは

健康経営とは、経営的な視点で従業員の健康を管理する取り組みです。企業にとって従業員は大切な資源であり、常に最高のパフォーマンスを発揮してもらわなくてはなりません。言い換えれば、従業員の健康状態次第では企業の利益を損ねるおそれもあるのです。

企業が健康経営に取り組むメリットは多く、まず生産性の向上が挙げられます。健康増進に配慮した取り組みを行えば、従業員が心身ともに健康な状態で業務を遂行できるため、作業ミスの軽減や作業スピードのアップにつながり、生産性が向上します。

また、従業員の健康に配慮する企業としてイメージアップが図れ、優秀な人材の確保が期待できます。ほかにも医療費の削減や従業員満足度の向上、それに伴う離職率の低下など、さまざまなメリットが見込めます。

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健康経営のためには食のサポートが重要

暴飲暴食や栄養の偏りなどの乱れた食生活は、健康に大きな影響を与えます。そのため、優れた健康経営を実現するためには、従業員への適切な食のサポートが重要になります。

農林水産省の「平成18年度 食料・農業・農村白書」によると日本の死亡原因の6割は食習慣の乱れや運動不足などの生活習慣病に起因し、関連する医療費は医療費全体の1/3を占めており、決して軽視できる数値ではありません。
参照:農林水産省「平成18年度 食料・農業・農村白書」

生活習慣病の原因は、ほかにも過度な飲酒や喫煙などが挙げられますが、無視できないのはやはり乱れた食生活や食習慣です。乱れた食生活が続くと肥満や糖尿病、高脂血症、高血圧など、さまざまな疾患を引き起こす原因になります。そのため、企業が従業員に対して適切な食生活のサポートを行うことは、従業員の生活習慣病予防に役立ち、ひいては健康経営につながるのです。

現役世代の食生活の問題点

現役世代における食生活の問題点として「朝食の欠食」「栄養バランスの乱れ」「野菜摂取量の不足」などが挙げられます。これらの問題が健康にどのような影響をもたらすのか、確認しておきましょう。

朝食の欠食

厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査報告」によると、働き世代である20代~40代で朝食の欠食率が高く、朝食をとらずに働く人が多いということがわかっています。

朝食を食べない理由は「できるだけ長く寝ていたい」「食欲がわかない」「ダイエットしている」など人それぞれですが、朝食の欠食は業務にさまざまなリスクをもたらします。

例えば、朝食をとらないと脳のエネルギーであるブドウ糖が不足しているため、集中力や記憶力の低下を招いてミスが頻発する、作業のスピードが遅くなるといったように仕事に支障をきたします。

また、体を動かすエネルギーも足りないため、体が重く感じて疲れやすいため、生産性の低下が懸念されます。

つまり、朝食を抜くと仕事のパフォーマンスが十分発揮できない可能性が高いため、朝食はきちんと食べることが大切です。

なお、食べるものは何でもよいというわけではありません。農林水産省では脳のエネルギーであるブドウ糖が長く持続するご飯を、ビタミンB群を多く含む納豆や豚肉などの食品と一緒に摂取するなど、バランスのよい朝食を推奨しています。

参照:厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」

参照:農林水産省「朝ごはんを食べないと?」

栄養バランスの乱れ

何をどれくらい食べるかは健康を考えるうえでとても重要です。偏った食生活や暴飲暴食は栄養バランスが悪く、さまざまな弊害をもたらすリスクがあります。

その中でも注意したいのが脂質のとり過ぎです。近年、脂質をとり過ぎている日本人の割合が増えています。脂質のとり過ぎは肥満や高血圧、心血管疾患など、さまざまな健康リスクを高めることがわかっています。

ただし、脂質は炭水化物やたんぱく質などと同様に体にとって大切な栄養素であり、気をつけるべきは「質」と「量」なのです。例えば、動物、魚、加工食品によって含まれる脂質(脂肪酸)は異なります。そのため、日々の食事では偏ったものばかりを好んで食べるのではなく、さまざまな食品をバランスよく食べることが大切です。

野菜摂取量の不足

野菜には各種ビタミンをはじめ、いろいろな栄養が豊富に含まれています。そのため、積極的に摂取することが望ましいです。しかし現在、日本において野菜摂取量の不足が問題視されています。

国では健康な生活を維持するための目標値として、1日の野菜摂取量を350g以上としています。しかしながら厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査報告」によると、野菜摂取量の平均値は280.5gであり、男女ともに働き盛りである20代~40代で野菜の摂取量が少ないのです。

野菜の摂取量が十分でないと腸内環境が悪化しやすく、慢性的な下痢や便秘の原因になる可能性があります。また、肌荒れや頭皮のかゆみ、フケなどの原因になるだけでなく、免疫力が低下して風邪をひきやすくなる、体が疲れやすくなるといったリスクも招きます。

参照:厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」

従業員の食生活改善の施策例

紹介したように従業員の健康を守るためには、正しい食生活のサポートが欠かせません。ですが、具体的に何から着手すればよいのか悩んでしまう経営者や担当者もいるでしょう。そこでここからは食生活改善サポートの具体的な施策例を紹介します。

健康メニューを意識した社員食堂の運営

現在、健康的なメニューを提供する社員食堂を運営し、従業員の健康サポートをしている企業が増えています。

一例を挙げると野菜不足解消としてサラダバーを導入したり、脂質対策としてドレッシングをノンオイルタイプのヘルシーなものに切り替えたりなど、栄養バランスに配慮したメニューを提供することで、従業員の健康増進を目指しています。

また、企業によっては朝食に力を入れるところも多く、低価格または無償で栄養バランスのよい朝食を提供しています。

さらに脂質を含む揚げ物メニューを値上げし、反対に魚料理の値下げを行うことで従業員の脂肪摂取量抑制を促している企業もあります。この企業ではほかにも食器にセンサーを取り付け、喫食状況や摂取した栄養比率を分析し、従業員の栄養摂取状況などの把握に役立てています。

設置型社食サービスの導入

社員食堂の導入で、従業員の食生活の見直しや健康増進が図れますが、コスト的に導入が難しい企業も少なくありません。社員食堂の導入が難しいのなら、設置型社食サービスを取り入れてみてはいかがでしょうか。

設置型社食サービスとは、社内に専用の冷蔵庫または冷凍庫を設置して、総菜やお弁当を販売するスタイルです。従業員は栄養バランスに配慮した総菜やお弁当を朝食やランチで利用できます。従業員の健康に配慮できるだけでなく、外へ食事や買い物に行く必要がないため、従業員の満足度向上にもつながります。

食育教育の実施

健康が大切であると従業員に訴えても、本人に問題意識がなければ食生活の見直しや改善につながりません。そこで近年、従業員を対象とした食育教育を実施する企業が増えています。

例えば、生活習慣病予防のための健康イベントを実施したり、世代別に食事や生活習慣病に関する講演会や講義を開催したりなど、従業員の健康に配慮した食育教育が進んでいます。

また、オンラインで受講できる食育セミナーやeラーニングでの食育教育も広がりを見せており、これまで食育セミナーが受けられなかった地方の企業をはじめ、全国規模で展開する企業、さらにはテレワークを導入している企業でも場所や時間を問わずに受講できるため、導入しやすく、従業員の食への意識を見直すきっかけになっています。

まとめ

食事と健康には密接なつながりがあり、健康経営を実現するには従業員の食生活に目を向け、企業が従業員の食生活の見直しや改善をサポートする取り組みを行うことが重要です。

例えば、健康的なメニューを提供する社員食堂を導入したり、コスト的に難しいのなら設置型社食サービスを利用したりするのもいいでしょう。設置型社食サービスであれば、低コストで導入でき、従業員の満足度向上にもつながります。そして、従業員を対象にした食育教育も有効です。オンラインで受講できる食育セミナーやeラーニングを活用すれば、従業員の負担も少なく、健康増進が目指せるでしょう。

健康経営とは何か?

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