ウェルネスライフを実現するために企業ができることとは

近年、従業員のウェルネスを実現するための取り組みに着手する企業が増えています。しかし、自社でも取り組みを始めたいと考えているものの、具体的に何から手をつければよいのか見当がつかない経営者の方も少なくないでしょう。本記事では、従業員のウェルネスを実現するための取り組みについて解説をします。

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ウェルネスとは

ウェルネスとは、身体以外のさまざまな部分が健康になることで、豊かで充実した人生を歩めるといった考え方です。身体だけでなく精神や仕事、環境などさまざまな視点から健康を考える概念であり、あらゆる健康をベースとして自己実現を目指すことに重点を置いています。

ウェルネスは、アメリカを拠点に公衆衛生医師として活動していた、ハルバート・ダンが提唱した概念です。同氏が提唱したのは1961年のことですが、広く認知されるようになったのは1977年以降です。1977年に全米ウェルネス協会が発足し、1985年には日本でも財団法人日本ウェルネス協会が設立され、認知度が拡大しました。

ウェルネスを測る基準は7つあり、身体と感情、社会性、精神、知性、職業、環境が該当します。これらの要素に当てはめることで、自身のウェルネス状態を測ることができるのです。どれか1つの要素が突出している状態ではなく、バランスよく満たされていることが大切といわれています。

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ウェルネスライフのためには自分を愛することが大切

ウェルネスライフの基本は、自分を愛することといわれています。自分を愛することができなければ、心身ともに健康的な生活は望めません。たとえば、毎日暴飲暴食をしている、睡眠時間を大幅に削っている、休まず働いている状態は健康を損ねることにつながり、自分を愛しているとはいえません。

自分を愛せない人は、自身の身体はもちろん仕事や取り巻く環境、友人や家族も大切にできません。自分を愛することがあらゆる健康につながり、自己実現にもつながっていくのです。

人生で目的を見出すことの重要性

人生の目的を見出すことで、健康増進の効果が期待できるといわれています。実際に、ニューヨーク州にあるマウントサイナイ医科大学の研究では、目的意識をもって人生を歩んでいる者は心血管疾患の発症リスクが低く、長寿であることがわかったのです。

また、イギリスのラッシュ大学医療センターの研究では、ポジティブに人生を謳歌している高齢者はそうでない者と比較して、脳梗塞のリスクが半減することも明らかになりました。さらに、埼玉医科大学総合診療内科に属する医師らの研究結果では、明確な目的をもって人生を歩んでいるということは、生活習慣が健康的であるということでもあると結論づけています。

これらの研究結果から、ウェルネスライフの実現には目的意識をもつことが重要であると理解できます。たしかに、人生の目的が明確であれば、あえて不健康になるようなことはしないでしょう。そう考えれば、ウェルネスライフ実現への第一歩は、人生における目的意識を設定することであるといえるのかもしれません。

人間関係はウェルネスライフに非常に重要

ウェルネスライフの実現において、人間関係はとても重要といわれています。ハーバード大学が75年にわたり実施した幸福度の研究調査では、「よい人間関係を築けている者ほど健康かつ幸福度が高い」との結果になりました。

この研究は、ハーバード大学を卒業したエリートと、貧困層の男性約700人を対象に実施しています。普通に考えると、高学歴で社会的な地位も高いハーバード大学卒男性の幸福度が高いと考えられますが、実際にはそうなりませんでした。

また、良好な人間関係を築けている者ほど脳が健康に保たれる傾向がある一方で、心から信頼できる人間が周りにいない者は病気になりやすい傾向が確認されました。このような研究結果から、人の幸福度、健康はお金や地位、学歴で決まるのではなく、いかによい人間関係を築けるかどうかが鍵を握っていると理解できます。

従業員のウェルネスの実現に向けた企業の取り組み

ウェルネスを測る指標の1つに、環境のウェルネスが挙げられます。この環境とは、生活環境はもちろん職場環境も含まれています。人生で考えると、職場ですごす時間は多いため、健全な職場環境の構築は従業員のウェルネス実現にあたり不可欠といえるでしょう。

健康経営のための組織の整備

まずすべきは、健康経営を促進するための組織づくりです。健康経営とは、従業員の健康を促進することで自社の利益拡大を実現できるとの考え方です。従業員の心身が健康であれば、ケガや病気のリスクを軽減でき、職場でも高いモチベーションを発揮して活躍してくれます。

健康経営のための組織を整備するには、経営層が本気であることを示さなくてはなりません。健康経営をプロジェクトとして進めるためのチームを発足させ、責任者も設置しましょう。

従業員の健康維持に役立つ情報の発信や、具体的な取り組みを進めるには、専門的な知識をもつ人材がプロジェクトチームに必要です。産業保健師や産業医、臨床心理士など外部の専門家をメンバーに加えることも視野に入れてみるとよいでしょう。

労働時間の抑制

長時間労働が慢性化している職場では、従業員の健康被害を高めるリスクがあります。心身への過度な負担のため過労で倒れる、集中力が低下しケガをするといったリスクが考えられるため、労働時間の抑制にも取り組みましょう。

長時間労働は、従業員の身体だけでなく精神にも悪影響を及ぼします。プライベートの時間を満足にとれず、思い描くライフスタイルからも遠ざかってしまうため、ストレスをため込む原因にもなってしまうでしょう。

労働時間を抑制する方法はいくつかありますが、1つにはITツールの導入による業務効率化が考えられます。業務を効率よく遂行できる環境を構築すれば、労働時間の短縮につながり残業時間も削減できるでしょう。また、浮いた残業代を従業員に還元するシステムの導入や、有給取得を推進する取り組みも労働時間の抑制に有効です。

オフィスの環境整備

従業員が快適に働けるオフィス環境を構築するのはもちろんのこと、健康にも配慮したオフィスづくりに取り組みましょう。たとえば、従業員の座りすぎを防止する取り組みは、ウェルネスの実現に有効です。

基本的に、オフィスワークは座ったまま取り組むケースがほとんどですが、近年座りすぎが健康リスクを高めると指摘されています。この問題を解決するには、従業員がひとつの場所に留まり続けることなく、業務を遂行できる環境の構築が求められます。

たとえば、個々にデスクを割り当てず、さまざまな場所で業務を行えるオフィス環境はどうでしょうか。従業員が思い思いに好きな場所へ移動し、業務に取り組めるオフィスであれば、自然に活動を促せます。座りすぎを防止できるだけでなく、リフレッシュ効果も期待できるでしょう。

また、従業員が楽な姿勢で業務に取り組める設備の導入も大切です。無理な姿勢で業務を遂行していると、健康リスクを高めてしまいます。昇降式のデスクや背もたれの角度を変えられるイスなど、個々の従業員が楽な姿勢で業務に取り組める環境を構築しましょう。

近年では、社員同士が交流できるコミュニティスペースを整備する企業も増えました。コミュニケーションの活性化により、従業員同士が良好な人間関係を構築できる、部門の壁を超えた情報共有ができるなどさまざまなメリットを得られます。

まとめ

ウェルネスとは、身体以外の精神、仕事、環境などの視点からも健康を考える概念であり、豊かな人生を送るための自己実現でもあります。

ウェルネスの実現に取り組むのであれば、まずは健康経営を推進するための体制を整え、労働時間の抑制やオフィス環境の整備にも注力しましょう。従業員のウェルネスを実現できれば、生産性や組織力を高められ、離職防止にもつながります。

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