フェムテックで不妊症に活用 働く女性の健康課題や健康サポートを解説

働く女性の不妊症や更年期などの健康問題は、企業や社会全体で取り組むべき課題と言えます。そこで注目されているのがフェムテックです。

フェムテックは、女性の健康問題にテクノロジーでアプローチする分野であり、多様なサービスも誕生しています。本記事では、フェムテックの概要や注目されている背景、活用したサービスを解説しています。

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フェムテックとは

フェムテックとは、「Female(女性)」と「Technology(科学技術)」を組み合わせた造語です。女性の健康に関わる悩みをテクノロジーで解決していく分野として、近年、あらゆる商品やサービスが誕生し、注目されています。

従来、生理やPMS(月経前症候群)、不妊症、更年期障害などの健康問題は、女性の社会活動において注目されにくい悩みでした。その中で近年、世界共通目標であるSDGsの中で、「ジェンダー平等と女性および女児のエンパワーメント」の重要性が掲げられたことから、この問題もクローズアップされ始めたのです。

少子高齢化が進む中、社会の重要な担い手として、女性の活躍が求められています。女性が健康的に働ける環境づくりは、企業でも重要課題であると言えるでしょう。その課題解決に、フェムテックが大いに期待されているのです。

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フェムテックが注目されている理由

フェムテックが注目されている理由は、以下の4つが挙げられます。

女性特有の問題の可視化

従来は公にすべきではないとされていた女性特有の悩みは、SNSの普及やSDGsによるジェンダー平等意識が高まったことにより、オープンに語られるようになりました。このことで、女性の抱える問題が明るみになり、問題解決するためのビジネスが普及してきたのです。

また、女性の社会進出により、役員や起業家として活躍する人が増えたことも理由のひとつでしょう。女性の声が汲み取られやすい環境が進み、女性が活躍する企業は先進的であるというイメージもついてきました。このことにより、女性の声を反映した商品やサービスが活発化しているということも、フェムテックが注目される大きな理由と言えます。

テクノロジーの進化

近年のテクノロジーにおける進化も、フェムテックに大きな追い風となっています。フェムテックに限らず、Fintech(金融とテクノロジー)やEdtech(教育とテクノロジー)など、さまざまな社会の問題を解決するために最新テクノロジーが応用されているのです。

テクノロジーの進化によって、生理や身体のデータが数値化され、スマホなどで手軽に管理できるようになりました。また、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)分野の成長も、女性の健康情報の収集・解析、および解決への手助けになっています。今後のさらなる進化によって、より高度なフェムテックが期待されるでしょう。

女性の体調不良で経済損失が発生している

一昔前に比べ、女性が社会に出て働くことは当たり前の時代となりました。そのような時代において、女性の健康における問題は、労働損失に繋がりかねません。経済産業省の資料「月経随伴症状による1年間の社会経済的負担」において、労働損失が4,911億円に及ぶという試算が提示されたほどです。
(参考:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/josei-kenkou.pdf

このことから、企業の健康経営においても、女性の健康問題は解決すべき重要な課題と言えるでしょう。女性が健康的に働けることで、労働損失が減少し、経済の活性化が期待できます。フェムテックは、企業の健康経営において、今後欠かせない重要なものになるでしょう。

不妊症と仕事の両立

近年の晩婚化に伴い、不妊治療を受ける夫婦や、体外受精などの生殖補助医療を用いて生まれる子どもは珍しくありません。そのため、働きながら不妊治療を受ける女性も多く、2017年の調査では不妊治療の患者のうち、92%は仕事をしているという結果が提示されました。
(参照:https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30i.pdf

不妊治療にはさまざまな負担が伴い、金銭や時間的負担に加え、精神的にも身体的にも負担が生じます。これらは、女性の活躍が求められる社会において、不妊治療を行う夫婦には切実な問題です。特に治療のために通院する負担は、女性の割合が非常に高くなっています。このような問題にも、今後はフェムテックの活躍が期待されるところです。

フェムテック活用による女性の健康サポート

フェムテックを活用した、女性の健康サポートについて解説します。

専門家相談やサポ―トの利用

フェムテックを活用したもののひとつとして最近普及しているのが、チャットやビデオ通話を利用して専門家へ健康問題を相談できるサービスです。医師や看護師、臨床心理士、カウンセラーなどによって、自身の健康状況に応じたサポートを受けられます。外出する必要がなく、気軽に相談できることもあり、病院で受診するよりも相談しやすいことがメリットです。

不妊治療や更年期障害では、こころのケアが必要なことも多く、気軽に相談できることで需要も高まっています。また、コロナ禍における感染予防の観点からも、利用価値が高く、利用者数も増える見込みです。

ツールを活用した健康管理やトラッキング

自身の排卵日や基礎体温、不妊治療の経過記録などのデータを登録・管理できるサービスが拡大しています。以前から、生理日計算のためのツールは存在していましたが、さらに不妊治療や妊活、PMSなどに特化したものに進化しているのです。

また、記録しているデータを医療機関と共有できるサービスも誕生しました。わざわざ医療機関の問診票などに細かなデータを書き写す必要がないため、受診者の負担軽減に繋がります。さらに医療機関は、詳細なデータの取得により、診療もスムーズに進めることができるのです。この分野は、今後もさらにサービスが拡充されていくと考えられています。

自身の状態を知るための簡易検査キット

自身の状態を知るための検査を、自宅で簡単にできるキットも登場しました。卵巣年齢検査キットやホルモン検査キットです。昨今、晩婚化が進んでおり、自身の不妊に悩む女性も多くなっています。卵巣年齢検査キットは、妊娠のしやすさを知るバロメーターとして、今後の妊娠計画に役立てることができるのです。

また、ホルモン検査キットは、生理や妊娠以外に、更年期にも影響を与えるホルモンを測定できる簡易キットです。産婦人科や婦人科へ通院しなくても、自宅で検査して、なおかつ結果も自宅で知ることができるとして、需要が高まっています。

月経前症候群(PMS)の緩和などの医療支援

月経前症候群(PMS)の緩和に効果のある低用量ピルを、オンライン診療で処方され、自宅に配達してもらえるサービスも増えています。従来、低用量ピルを処方してもらうには、産婦人科や婦人科を受診しなければなりませんでした。このサービスが登場したことで、病院の開いている時間に合わせたスケジュール調整の手間がなくなり、多くの女性にメリットが生まれています。

フェムテック活用に関する経済産業省の取組

経済産業省は、「フェムテックを活用した働く女性の就業継続支援」として、働く女性の妊娠・出産・更年期等のライフイベントに起因する、望まない離職等を防ぐための支援を行っています。企業の人材における多様性を高め、企業の価値創造に繋げることを目指した取り組みです。

令和3年度より「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」を立ち上げ、働く女性の健康課題を本人だけでなく、企業や社会全体で解決しようという目標を掲げています。

まとめ

フェムテックとは、女性特有の健康問題をテクノロジーで解決する分野です。女性の健康問題における悩みの可視化や、テクノロジーの進化によって、注目されており、さまざまなサービスや商品が誕生しています。

近年は、働きながら不妊治療を行う女性も増えており、フェムテックを活用したサポートが重要視されています。フェムテックの活用サービスとして需要が高まっているのは、オンラインを使った専門家への相談や健康状態の記録・管理ができるツール、簡易検査キット、低用量ピルの宅配サービスなどの支援です。
経済産業省でも、フェムテック活用企業の実証事業を行うなど、女性が行きやすい社会のために目標を掲げています。

ウェルネスの空では、フェムテックの活用も含め、ウェルネス志向な経営に役立つさまざまな情報を提供しています。

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