メンタルヘルスとは 職場においての重要性とケア方法について解説

企業が中長期的に発展していくためには、いかにして従業員のパフォーマンスを最大化するかが重要な課題です。そして、従業員の労働意欲や貢献意識を高めるためには、メンタルヘルスの総合的なケアが欠かせません。本記事では、メンタルヘルスの概要や重要性について解説するとともに、職場でできるメンタルヘルスケアの方法をご紹介します。

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メンタルヘルスとは?

「メンタルヘルス(英:Mental Health)」とは、心や精神面における健康を指す概念です。警察庁の自殺統計に基づく厚生労働省の調査(※1)によると、国内における年間の自殺者数は2012年に15年ぶりに3万人を下回り、2021年には2万1,007人にまで減少しています。しかし、統合失調症や気分障害、神経症性障害など、心の病気や問題を抱える人は年々増加傾向(※2)にあるのが実情です。

国内では精神障害の労災請求および認定件数が増加傾向にあり、厚生労働省の調査では2016年の労災請求が1586件であるのに対し、2020年には2051件(※3)にまで上昇しています。このような社会的背景から国内では心の健康が大きな注目を集めており、企業経営においても従業員のメンタルヘルスをサポートする重要性が認知されつつあります。

(※1)参照元:自殺の統計:最新の状況(p.1)|厚生労働省
(※2)参照元:平成30年版厚生労働白書-障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に-(p.80)|厚生労働省
(※3)参照元:精神障害に関する事案の労災補償状況(p.15)|厚生労働省

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職場におけるメンタルヘルスの重要性

企業経営の領域でメンタルヘルスが重要視される理由のひとつが労働生産性の向上です。労働生産性とは「労働生産性=産出量÷労働投入量(従業員数×労働時間)」という数式で算出される、従業員一人あたりが生み出す生産量と付加価値額を指します。企業が中長期的に発展していくためには、いかにして従業員一人あたりの労働生産性を高めるかが重要な経営課題です。

とくに日本は世界第3位のGDPを誇る経済大国であるにもかかわらず、日本生産性本部が公表した「労働生産性の国際比較 2021」によると、一人当たりにおける労働生産性はOECD加盟38ヶ国で28位(※4)となっています。競合他社との差別化を図り、市場における競争優位性を保つためには、イノベーティブなビジネスモデルを確立するとともに、従業員一人ひとりの労働意欲や貢献意識を高め、それぞれがもつパフォーマンスを最大化しなくてはなりません。

過重労働や人間関係のストレスなどによって従業員がメンタルに不調をきたせば、モチベーションやエンゲージメントの低下につながり、組織全体における労働生産性の減少を招きます。さらに職場環境における強いストレスや不満は、従業員の離職率や定着率が悪化する要因となるでしょう。このような人的資源管理におけるリスクを最小化し、強固な経営基盤を構築するためにも、従業員の心や精神面における健康を総合的にサポートする必要があります。

(※4)参照元:労働生産性の国際比較 2021(要約)|公益財団法人 日本生産性本部

メンタルヘルス不調の原因

メンタルヘルスに不調をきたす原因はさまざまです。たとえば、過重労働や違法な残業による心身の疲弊、職場の人間関係による過度なストレス、またはパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなどが挙げられます。こうしたストレス要因はドーパミンやノルアドレナリンの分泌を促し、心の安定を保つセロトニンの減少を招きます。

厚生労働省の調査(※5)によると、「仕事や職業生活に強い不安やストレスを感じる」と回答した人のうち、その要因としてもっとも多かったのは「仕事の量・質(56.7%)」でした。このことから、過重労働や違法な残業がいかに労働者の負担になっているかがわかります。また、「セクハラ・パワハラを含む対人関係」が27.0%で3位と、こちらも大きな要因となっています。

(※5)参照元:職場におけるメンタルヘルス対策の状況|厚生労働省

メンタルヘルス不調の兆候

日本では滅私奉公を美徳とする企業風土が根強く残っている組織が多く、メンタルヘルスの不調を「怠惰」と捉える傾向があります。しかし、心や精神の不調が業務に支障をきたすのはもちろん、最悪の場合は苦悩のあまり自らの命を絶つという可能性も否定できません。このような事態を回避するためには、経営層や管理職がメンタルヘルスの重要性を理解し、従業員の心のケアをリスクマネジメントの一種と捉える組織体制が必要です。

メンタルヘルスに不調をきたす兆候としては、まず理由が定かではない焦燥感や不安感に駆られるようになり、寝付きの悪さや倦怠感などの肉体的な症状が現れます。この段階では周囲はもちろん、本人も抑うつ症状としての自覚がないケースが多く、兆候を察知するのは困難です。やがて自律神経の乱れやドーパミンの減少から抑うつ的な傾向が現れはじめ、業務上のミスやエラーが増えたり、コミュニケーションに違和感を覚えたりといった現象が目立つようになります。このような状態であれば、黄信号と考えられるでしょう。

職場でできるメンタルヘルスケアの方法

ここからは、職場で実行できるメンタルヘルスケアの方法や内容について見ていきましょう。代表的な施策として挙げられるのは以下の4つです。

セルフケア

メンタルヘルスケアの基本は、自分自身との対話によるセルフケアです。心の不調の初期段階では、労働意欲の減退や集中力の欠如、食欲不振や無気力感といった症状が現れます。日本は心や精神の疾患に対する理解が浅い傾向にあり、勤勉な国民性と相まってこうした心の声なき悲鳴を「怠け心」と捉えがちです。心の不調を単なる怠惰と捉えるのではなく、自分自身がメンタルヘルスへの理解を深め、ストレスチェックやマインドフルネスなどを実践する姿勢が求められます。

ラインケア

ラインケアとは、管理者や直属の上司が部下の異変を察知し、相談や支援などのサポートを実施するメンタルヘルスケアの手法です。組織に属する人材の心の健康を保つためには、従業員自身が心や精神への理解を深めるだけでなく、メンタルヘルスの重要性を周知徹底する組織体制を構築しなくてはなりません。したがって、労働環境の改善や従業員の相談対応などの業務を、管理者の重要な役割であると認識する風土や文化を醸成する必要があります。

事業場内産業保健スタッフによるケア

事業場内産業保健スタッフとは、産業医や衛生管理者、労働安全衛生担当職員などの産業保健に関わるスタッフの総称です。メンタルヘルスケアに関して深い知見を備えた人材がセルフケアやラインケアの体制を整備し、従業員や管理者を総合的に支援します。事業場内産業保健スタッフが従業員の教育研修や情報提供を実施することで、組織全体におけるメンタルヘルスケアの体制を整えられます。

事業場外資源によるケア

事業場外資源によるケアとは、医療機関や地域産業保健センターといった外部組織のリソースを活用するメンタルヘルスの手法です。心の専門家にメンタルヘルスケアをアウトソースすることで、自社の人的資源を業績向上に直結する設計や開発などのコア業務に集中できるというメリットがあります。また、近年ではメンタルヘルスケアに特化したアプリケーションの活用を推進する企業も少なくありません。

まとめ

「メンタルヘルス」とは、心や精神面における健康を指す概念であり、従業員一人ひとりのパフォーマンスを最大化する上で非常に重要な要素です。過重労働や人間関係によるストレスなどで従業員が心に不調をきたせば、組織全体における労働生産性の低下につながるでしょう。

ウェルネスの空では健康経営を推進する企業を対象に、さまざまな観点からメンタルヘルスに関する情報をお届けしています。

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