ウェルビーイングとは? 注目される背景や実践メリットを解説

近年、働き方改革の施行やSDGsの浸透を受け、健康経営への取り組みをはじめる企業が増えています。そこで経営改善の取り組みとして注目されているのが、ウェルビーイングの概念です。
本記事では、ウェルビーイングの概要をはじめ、注目される背景、さらに企業が取り組むメリットについて解説します。

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「幸福」「健康」という意味を持つウェルビーイング

ウェルビーイングとは、直訳すると「幸福」や「健康」といった意味を持ち、そこから転じて「良好な状態」といった抽象的な概念を表します。この言葉は、世界保健機構(WHO)が憲章の前文において、以下のように使用したことで有名です。

「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。」
(引用元:https://japan-who.or.jp/about/who-what/charter/

ここでは健康の定義として、肉体、精神、社会という3つの要素が「満たされた状態」を示す意味でウェルビーイングが用いられています。
ウェルビーイングの概念は、さらに細分化すると人間関係や経済面など、個人をとりまくさまざまな要素に当てはめることができます。あらゆる要素をバランスよくケアしていくことで、健康かつ健全な状態を目指すことが、ウェルビーイングを実現する目的であると言えるでしょう。

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ウェルビーイングの5つの種類

前項で紹介したように、ウェルビーイングを満たすためには、人間の心身や社会的状況など複数の要素が関係してきます。例として、以下の5つの種類に分けられます。

  1. キャリア・ウェルビーイング
    ここで示す「キャリア」とは、単に仕事関係だけでなく、学歴、結婚、子育て、ボランティアなど、人生におけるあらゆる活動や経験を指します。たとえば文科省が掲げている生涯学習は、これを促進する施策の一つと言えます。
  2. ソーシャル・ウェルビーイング
    良好な人間関係を築けているかについて着目する要素です。人間関係が健全であれば、困難に直面した際にサポートを得られやすいため、高度な問題解決能力を発揮できます。
    単に交友関係を持った数だけでなく、それぞれと十分な信頼関係を結べているかのようなつながりの強さも重視されます。
  3. フィナンシャル・ウェルビーイング
    経済的に満たされている状態を指します。報酬や資産が十分であることに加え、適切に資産の管理・運用が行われていることも含まれます。
  4. フィジカル・ウェルビーイング
    身体面で満たされているかについて着目します。怪我や病気がないことはもちろん、肉体的に充実していて思うままに身体を動かせる状態であることを指します。精神面についてもこれに含まれ、仕事や趣味といった生活へのモチベーションが高い状態を保つ必要があります。
  5. コミュニティ・ウェルビーイング
    地域社会や家族、親戚関係などと良好に関わることができている状態です。隣人や家族関係にトラブルを抱えていれば、健康で健全な状態とは言えません。

ウェルビーイングが注目される背景

近年では、ウェルビーイングの概念を事業に取り入れる企業が増えています。株式会社グローバルインフォメーションの試算によると、世界の企業向けウェルネスの市場規模は年々拡大しており、2028年には934億ドルに達すると予想されています。
ここからは、ウェルビーイングへの注目が高まる背景について説明します。
(参照元:https://www.gii.co.jp/report/grvi996513-corporate-wellness-market-size-share-trends.html

少子高齢化などにより人材確保の必要性が高まっている

近年では、少子高齢化や終身雇用制度の崩壊による転職の広がりといった情勢を受け、人材確保のための取り組みが重要性を増しています。
日本の労働人口が減少する中で、企業は魅力的な雇用条件や労働環境をアピールできなければ、能力のある人材を十分に確保するのは難しい状況と言えます。
そこで求められるのが、給与だけでなく福利厚生や労働環境の改善によるウェルビーイングの実現です。残業時間の削減や出産・育児に備えたサポートにより、従業員だけでなくその家族の幸福を尊重した業務環境を構築する必要があります。

SDGsでは「GOOD HEALTH AND WELL-BEING」という目標が含まれている

SDGsとは、2015年の国連サミットにおいて採択された国際的な目標のことで、その中には「GOOD HEALTH AND WELL-BEING」(すべての人に健康と福祉を)」が含まれています。
企業においてもSDGsへの貢献が求められており、これの実現に取り組むことで「社会的責任を果たす能力のある企業」として自社のブランドイメージを高められます。

働き方改革の促進

「働き方改革関連法」は2019年4月より施行されています。働き方改革とは、少子高齢化や働き方に対するニーズの多様化を背景に、男女関係なく、より多くの人々が、働き方を自分で選択できる社会を実現する取り組みです。
企業は時間外労働の上限などで規制を受けるため、法令遵守のために労働環境の是正を必要とする場合があります。
ウェルビーイングな環境づくりを目指すことは、働き方改革への取り組みとして効果的と言えるでしょう。

ウェルビーイングの実施メリット

続いては、従業員のウェルビーイングに配慮した経営により、企業が得られるメリットについて解説します。

健康経営の促進による職場環境の改善

ウェルビーイングな環境を整備することは「健康経営」の促進につながります。健康経営とは、企業単位で従業員の健康増進に取り組む活動です。あらゆる要素で健康な従業員は互いを思いやる余裕ができることから、一般に健康経営が実現した職場は人間関係が改善され、労働環境を改善する効果があると言われています。

人材の定着率向上による離職率の低下

ウェルビーイングに配慮することは、従業員の愛社精神や経営への信頼といったエンゲージメントを向上させます。健全な環境に満足し、エンゲージメントが高い状態にある従業員は当然離職しにくく、定着率の向上に寄与します。また、低い離職率は求人のアピールポイントにもなるため、優秀な人材を新規に獲得しやすくなる効果が見込めます。
従業員が抱える不調や不満を早い段階で察知し、それぞれの事情に沿ったサポートを行うことで、離職を未然に防ぎ、健全な労働環境を構築できます。

ワークエンゲージメント向上に伴う生産性の向上

ワークエンゲージメントとは、従業員の精神面における健康さを表します。「熱意」「没頭」「活力」の3つの要素を充実させることが、ワークエンゲージメントを高めることにつながります。
企業がウェルビーイングな経営に取り組み、従業員が働きやすくやりがいを持てるようになることで、スキルアップや業務効率の改善による労働生産性の向上に寄与します。
また、社員同士で活発にコミュニケーションが取られ、モチベーションの高い状態で得られる業務アイディアは質が高く、実現性が伴うため、価値創出による新たな市場競争力の獲得にも期待できます。

ウェルビーイングの事例

最後に、ウェルビーイングを事業活動に取り込んだ企業の事例を紹介します。

「コレクティブ・ウェルビーイング」という概念を取り入れた楽天

楽天グループ株式会社は、ニューノーマル時代において従業員が心身ともに良好な状態で働ける組織づくりを目指す「コレクティブ・ウェルビーイング」のガイドラインを公開しました。
このガイドラインでは、良好な組織づくりのためのポイントとして、「仲間」、「時間」、「空間」からなる「三間(さんま)」の重要性が指摘されています。

「運動」に注力した健康経営を行うアシックス

株式会社アシックスは、個人と組織がともに成長していける企業文化の醸成のため、健康経営に取り組んでいます。
具体的な取り組み内容としては、健康増進プログラムの促進や運動推進セミナーの実施、終業後におけるスポーツ活動の推奨などが挙げられます。
アシックスは社員の定期健康診断の受診率や喫煙率、運動習慣保持者率などのデータを提示しており、それぞれ良好な数値が得られていることをアピールしています。
(参照元:https://corp.asics.com/jp/csr/wellbeing

まとめ

ウェルビーイングとは、身体や精神、さらに社会的、経済的な要素のすべてが充実している健康な状態を指します。ウェルビーイングを促進する取り組みは、働き方改革や健康経営、SDGsといった企業に求められる社会的責任を果たすことにもつながるでしょう。
また、ウェルビーイングを目指した環境構築は、従業員のエンゲージメント改善による離職率の低下や生産性の向上にも寄与します。
ニューノーマルな社会に即した組織経営で、持続的な好循環を生みだせる企業を目指しましょう。

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