社員の健康診断結果が再検査!? 人事労務担当者がするべき行動とは?

社員が受診した健康診断で再検査となった場合、会社はどのような行動を起こせば良いのでしょうか。本記事では、社員に再検査を受診させることのメリットや、受診を促さなかったときのデメリットをはじめとして、会社ができるサポートの例についてもご紹介します。

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社員の健康管理は、会社の義務

会社で働く社員の健康を管理する義務は、社員本人にあるのでしょうか。過去には、体調を崩せば「自己管理がなっていない」と言われることも多くありましたが、実は以下のように、社員の健康管理は会社に義務があると法律で定められています。

※労働契約法 第5条
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」
(引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000128&msclkid=6297decaab4111ec851142ff4ecdcdf0

これはいわゆる「安全配慮義務」と呼ばれ、労働者自身が負う義務に対して、会社側も労働者の安全や健康を守っていかねばならないことを意味しています。また、その義務を満たすための具体的な取り組みとしては定期的な健康診断の受診などがあり、実際に労働安全衛生法 第66条では企業側に実施が義務付けられています。
(例)

  • 雇い入れ時の健康診断(雇い入れ時のみ)
  • 定期健康診断(1年以内ごとに1回)
  • 特定業務従事者の健康診断(半年以内ごとに1回)など

なお、上記の健康診断は、後述する「二次健康診断」(再検査)に対して「一次健康診断」と呼ばれ、現在の身体の状況がどのようなものか、病気のリスクがどれだけあるのかについて調べる目的で受診します。また正社員のみだけではなく有期契約のパートタイム労働者においても、条件によって定期健康診断が義務化されています。

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社員の健康診断結果が再検査の場合

そもそも健康診断の結果は以下のように5種類あるとされています。

  • 異常なし:病的な所見が見つからなかった場合。
  • 経過観察:特に治療は不要だが、生活習慣の改善が必要で、次の健康診断で経過を見たほうがいいという場合。
  • 再検査:検査の結果が異常値のため、もう一度検査して確認すべき場合。
  • 要精密検査:さらに詳しい検査が必要な場合。
  • 要治療:病気であることが明確で、治療が必要な場合。

ではここからは、定期的に受診した健康診断の結果、上記の「再検査」「要精密検査」といった判断が出たケースについて見ていきましょう。

そもそも再検査は何をするの?

先述したように、「再検査」「要精密検査」が出る状況とは、先に受けた一次健康診断で異常が疑われる数値が出た場合に、その異常な数値が一時的なものなのか、あるいは本当に身体の問題によるものなのかを調べる必要があると判断されたということです。もう一度、同様の検査を行うことになるため、特に忙しいビジネスマンにとっては面倒だと思われるかも知れません。しかし、隠れた病気のリスクを少しでも減らすため、早めに受診するのが良いでしょう。

再検査は受けさせるべき?

健康診断で引っかかっても再検査を受けないとどうなるでしょうか。潜んでいた病気が悪化して取り返しのつかない状態になりかねません。また、本調子ではないために本来のパフォーマンスが発揮できず、期待した結果を出せない可能性が高まってしまいます。
つまり、健康を維持して働くためには、もし「再検査」などの診断が出ればきちんとその通り再検査を受けることが必要なのです。

先ほど、社員の健康管理は、雇う側に安全配慮義務があり、社員に定期的な健康診断を受けさせることが義務としてあることを解説しました。ただ、それはあくまで一次健康診断のことであり、実は二次健康診断(再検査)は会社の義務ではなく、任意とされています。
それでも労働安全衛生法の観点からすれば、もし社員の健康診断の結果が「再検査」となった場合は、やはり再検査の受診を勧めることが求められるでしょう。実際に「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」によると、以下のように明文化されています。
「健康診断(以下「一次健康診断」という。)における医師の診断の結果に基づき、二次健康診断の対象となる労働者を把握し、当該労働者に対して、二次健康診断の受診を勧奨するとともに、診断区分に関する医師の判定を受けた当該二次健康診断の結果を事業者に提出するよう働きかけることが適当である。」
(引用元:https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/kouji/K170417K0020.pdf?msclkid=116c0cefab5e11ecafb386abc84aa4c1

また、産業医や保健師などによる保健指導の必要性もうたわれています。
「事業者は、労働者の自主的な健康管理を促進するため、労働安全衛生法第 66 条の7第1項の規定に基づき、一般健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対して、医師又は保健師による保健指導を受けさせるよう努めなければならない。」
(引用元:https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/kouji/K170417K0020.pdf?msclkid=116c0cefab5e11ecafb386abc84aa4c1

義務ではないからといって、再検査をきちんと勧めずにいたことで病気が悪化した場合、その社員は休職や退職を余儀なくされるかも知れませんし、人員不足から業務が停滞し、損失を被る結果につながる可能性すらあります。
したがって、関連法令の有無にかかわらず、社員の健康をしっかり守り管理するという姿勢を持ち実践することは、現在の会社にとって不可欠であるといえるでしょう。

再検査の場合の費用

会社側が社員に再検査を勧め、実際に受診するとなった場合の費用については気になるところかも知れません。先述したとおり、再検査は二次健康診断となり、受診については義務として課せられていないことから、大多数の会社は個人負担としているのが現状です。
ただし、安全配慮義務の観点から、業務の合間に病院へ再検査に行く時間については、一定の配慮が必要となるでしょう。なお再検査は保険適用になるため、3割負担で受診が可能です。

再検査を受けやすくする体制を整えよう

これまで述べてきたように、病気のリスクが見つかり再検査と診断された社員へ受診を促すことはとても大切なことです。ただ、再検査を受ける場合、どこで受けられるのかを調べたり、時間も費用もかかったりするとなると、中には億劫になってしまう社員もいるかも知れません。
そこで、再検査を受けやすい環境整備を検討してみましょう。以下のような体制を作ることで、きっと「それなら再検査に行ってみよう」と自然に感じてもらえるようになるはずです。

費用を負担する

すでにご紹介したとおり、再検査の費用については法律で定められておらず、保険適用とはいえ、個人負担の会社が多数を占めています。しかし、中には安全配慮義務の観点から、再検査に必要な費用を負担する会社もあります。会社が費用を負担することで、社員も再検査へ行くハードルが少し下がるかも知れません。

休みやすい環境を作る

再検査のために病院へ行くのは時間的に、所定の労働時間中になることが多くなるはずです。有給についても義務ではなく労使間での協議で定めるべきことですが、円滑に受診させるためには、有給休暇として付与し、賃金補償をすることが望ましいでしょう。

就業規則を確認する

もしかすると社内には、どうしても再検査を受けたくないという社員もいるかも知れません。もちろん会社にとっては努力義務のため、再検査を強制できませんが、もし再検査を受けないまま健康上の問題が大きくなってしまった場合は、会社の安全配慮義務が問われるリスクがあります。
そのため、できればあらかじめ再検査の受診勧奨についても就業規則に記しておくことで社員にとっても会社側にとってもメリットがあるといえます。

まとめ

社員が高いパフォーマンスを発揮して働くために、まず健康であることが非常に重要です。そのため社員に定期的な健康診断を受診させることで早期にリスクを発見し、健康管理を行うことは会社の務めといえます。また、もし再検査と診断が下った場合はその診断通り、受診を勧奨することが必要です。費用を負担したり休みやすい環境を整備したりして、社員が生き生きと健康に働ける職場づくりを目指しましょう。

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