人事労務管理とは?代表的な業務の内容と課題について解説

企業が継続的に発展するためには、重要な経営資源である人的資源のパフォーマンスを最大化する仕組みを構築しなくてはなりません。そこで重要な課題となるのが、人事労務管理の整備です。本記事では、人事労務管理の概要や代表的な業務、課題や問題などについて解説します。

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人事労務管理とは?

「人的資源」「物的資源」「資金」「情報」は企業の4大経営資源と呼ばれており、とくに人的資源は事業活動の中核を担う重要なリソースです。人事労務管理は人的資源の総合的な管理業務を指し、大きく「人事管理」と「労務管理」の2つに分類されます。どちらも優秀な人材を確保するとともに、組織全体の生産性を高めることが本質的な目的です。

人事管理とは?

人事管理とは、人材の採用や育成、人員配置、人事評価、人事考課など、組織で労働に従事する従業員を個別に管理する業務です。企業が求める人材像の明確化、採用計画の立案・策定、採用活動の実施、人事評価制度の確立、従業員の特性に応じた人員配置、モチベーションやコンディションの管理などが主な業務となります。「従業員」を対象とする管理業務であり、従業員一人ひとりを個別に管理してパフォーマンスの最大化を図り、生産性の向上につなげることが人事管理の目的です。

労務管理とは?

労務管理とは、勤怠管理や給与管理、社会保険の各種手続き、福利厚生の運用、就業規則の立案・策定など、人材の労働環境を管理する業務を指します。その他に労働組合との折衝やハラスメントへの対処、安全衛生管理なども労務管理の業務領域です。

人事管理は「従業員の管理」が対応範囲であるのに対し、労務管理は「労働環境の管理」を対象とします。従業員が働きやすい職場環境を整備し、エンゲージメントやロイヤリティの向上を図ることで、生産性の最大化につなげるのが労務管理の目的です。

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人事労務管理の代表的な業務

人事労務管理の主な業務は以下に挙げる5つの領域です。

職場環境の整備・改善

人事労務管理の代表的な業務は、労働環境を整備・改善し、従業員のパフォーマンスを高めることです。たとえば、労働時間の管理やオフィスの衛生管理、福利厚生の充実、空調管理といった取り組みが挙げられます。

現代は少子高齢化に伴って労働力不足が加速しているため、いかにして優れた人材を確保するかが重要な経営課題となっています。そのためには離職率や定着率の改善に向けた職場環境の整備・改善が極めて重要です。また、従業員の健康管理を重要課題と捉え、健康経営®に重点を置いた福利厚生を取り入れる企業もあります。

健康経営については、以下の関連記事でも詳しく紹介しています。

※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

関連記事:健康経営の取り組み事例とメリット、具体的な取り組み方|ウェルネスの空 - よりよく生きるための健康を考えるポータルサイト

人材の採用と配置

人的資源は事業活動の中核を担う経営資源であり、企業にとって優秀な人材の採用は極めて重要です。近年は大企業志向の就職希望者が多く、知名度の低い小規模事業者や中小企業は新規採用が困難な傾向にあるため、採用戦略において競合他社との差別化が求められます。

また、生産性を高めるためには優れた人材を採用するだけでなく、従業員の能力や特性を最大限に発揮できるポジションに配置しなくてはなりません。こうした人材の採用と配置を通して企業の価値を高めることも、人事労務管理の代表的な仕事です。

人材の育成

国内市場では、総人口の減少や高齢化率の上昇により人材不足が深刻化し、採用コストが増加しています。そのため、現存する人材をいかに育てるかが課題です。

人事労務管理では、社会人としてのマインドセットや知識を身に付ける新入社員研修、リーダーシップやマネジメントスキルを強化する管理職研修などを実施し、人的資源の総合的なパフォーマンスの向上を図ります。経営基盤の強化を図るためには人材育成が不可欠であり、従業員のスキル向上につながる研修制度の整備や評価制度の仕組み化が求められます。

従業員の報酬管理

従業員の報酬管理も人事労務管理における代表的な業務のひとつです。給与や賞与は従業員のモチベーションを高める源泉であり、賃金総額をどうするか、あるいは各個人にどう分配するかを適切に設計しなくてはなりません。加えて、年末調整や企業年金、社会保険、雇用保険の手続きなども人事労務管理の重要な業務です。また、労働市場の需要と供給に基づく給与体系の見直しや、法的要件に合わせた報酬額の調整なども人事労務管理の対応範囲となります。

コンプライアンスによるリスク管理

近年は不正会計や架空請求、食品の産地偽装、製品の品質偽装など、企業の不祥事が取り沙汰される機会が少なくありません。コンプライアンス違反は企業の信用失墜や法的制裁、損害賠償請求、ブランドイメージの低下、売上機会の損失、株価の下落など、さまざまな損害を招く要因となります。

そこで重要となるのがコンプライアンスによるリスク管理です。人事労務管理では、労働基準法や労働安全衛生法はもちろん、社会規範、社会倫理などを考慮した社内規定や就業規則を策定し、そのルールを遵守する組織体制を整備します。

人事労務管理における課題

人事労務管理の推進には、いくつかの懸念事項や問題点が存在します。なかでも重要度の高い課題として挙げられるのが以下の3点です。

人材不足への対応

「令和4年版情報通信白書」によると、国内の総人口は2010年付近を頂点に下降し続けており、さまざまな産業で人材不足が深刻化しています。人材不足を解消するためには、より少ない労働投入量で従来と同等以上の成果を創出する仕組みが必要です。そのためには、優秀な人材の採用・育成や人員配置の最適化を図って労働生産性を高めるとともに、職場環境の整備や公正な人事評価制度の確立によってモチベーションの最大化や離職率低下への取り組みも実施しなくてはなりません。

こういった人材不足への対応を担うのが人事労務管理の仕事です。ただし、労働力不足によって人事労務管理を実行する人材も確保できないというジレンマに陥っている企業は少なくありません。

参照元:令和4年版情報通信白書(p.27)|総務省

多様な働き方への対応

ニューノーマル時代に即した先進的なワークスタイルの確立も、人事労務管理における重要課題のひとつです。現代は働き方改革の推進によってワークライフバランスの重要性が叫ばれており、企業はテレワーク制度やフレックスタイム制の導入といった多様な働き方への対応が求められています。こうした先進的なワークスタイルを確立できれば、育児や介護といった複雑な事情を抱える人材も確保できるというメリットがあります。

しかし現状では、テレワーク制度やフレックスタイム制、雇用形態の多様化などに対応できていない企業も多く、それによって人材の流出を招いている事例が多々あります。

ペーパーレス化への対応

人事労務管理はバックオフィス業務が基本的な対応範囲であり、給与明細や年末調整などの書類を紙ベースで作成している企業も少なくありません。紙媒体は物理的なスペースを専有するだけでなく、文書の検索に時間を要し、書類の紛失などの人的ミスや経年劣化による書類の破損も懸念されます。社会構造のデジタル化とともにDXの推進が重要性を増すなかで、紙の文書による人事労務管理は極めて非効率です。

また、テレワーク環境に最適化されたデジタルワークプレイスを整備するためには、ペーパーレス化への取り組みが欠かせません。したがって、新しい時代に即した人事労務管理の仕組みを整備するためには、紙媒体による管理からの脱却が求められます。

まとめ

人事労務管理は人的資源の総合的な管理業務であり、大別すると人事管理と労務管理で構成されています。人事管理は人材の採用や育成、人員配置、人事評価、人事考課など、労働に従事する従業員を個別に管理する業務です。労務管理は勤怠管理や給与管理、社会保険の各種手続き、福利厚生の運用、就業規則の立案・策定など、労働環境を管理する業務を指します。

人事労務管理の課題となるのは、人材不足と多様な働き方、そしてペーパーレス化への対応です。加えて、近年では健康経営への取り組みも人事労務管理の重要課題となっています。健康経営の推進を目指したい、もっと詳細を知りたいという場合は、以下のリンクより資料をダウンロードできます。

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