企業の健康診断における予約の流れと注意点、効率化のポイント

労働安全衛生法により、企業は従業員の健康管理を行うことが義務づけられています。企業における健康診断の実施もその一環といえるでしょう。本記事では、企業の人事や労務、総務担当者に向けて、健康診断における予約の流れや注意点、効率化のポイントなどについて解説します。

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健康診断の実施方法ごとの予約業務の特徴

企業における健康診断の実施方法は、社内での集団健診と個々の従業員が医療機関で受診するという2つの方法があります。それぞれの概要とメリット、デメリットを見ていきましょう。

会社内での集団健診

会社内での集団健診とは、社内に設置してある健康管理室、社内保健室などで実施される健康診断です。また、医療機関の健診車両と医師、看護師などを派遣してもらい、従業員に受診させるケースも少なくありません。

集団健診のメリットは、全従業員を対象として一斉に健康診断を実施できることです。社内の各部門と調整しつつ健診の話を進められるため、計画的な健康診断の実施が可能です。

一方、従業員によっては受診できなくなる可能性があるのは、デメリットといえるでしょう。たとえば、イレギュラーな業務が発生し予約した健診時間に間に合わなくなる、顧客対応が長引き健診が受けられなくなるといった事態が考えられます。

従業員が個々に医療機関で受診

個々の従業員が医療機関で健康診断を受診し、あとから結果を書類で提出する方法です。企業が指定した病院で受けさせる、もしくは従業員が自ら医療機関を選んで受ける2通りがあります。

従業員の都合やスケジュールに合わせて診断を受けられるのがメリットです。また、健康保険組合指定の医療機関で受診する場合は、補助金の対象となり申請業務も病院側で担当してもらえる可能性があります。

一方、個々の都合やスケジュールに左右されるため、全員の診断が終わるまでに長期を要するケースが少なくありません。健康診断を受けたくない従業員がいる場合はなおさらです。人事や労務担当者は、このような従業員に対し指導も行わなければなりません。

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企業が指定医療機関に予約する場合の流れ

企業における指定医療機関への予約の仕方ですが、基本的には時期を決める→従業員に希望を聞く→予約する→従業員にリマインドメールを送るという流れが一般的です。以下、詳しく見ていきましょう。

健康診断の時期を決め、従業員への希望調査を実施

まずは、健康診断を実施する時期を決めましょう。そのうえで、受診の対象となる従業員に希望する医療機関やコース、日時などをヒアリングします。

実施する時期については、組織の状況を確認したうえで検討するとよいでしょう。たとえば、繁忙期に健康診断を実施するとなると、業務に支障をきたし受けられない従業員も出てくる可能性があります。

また、選択できる医療機関やコースが多いのなら、従業員が選びやすいよう整理のうえ書面化しましょう。選択する医療機関によっては、希望する受診日時が休診日と重なる可能性もあるため、事前の確認と書面への記載が必須です。

健康診断を予約する

実施の日時を決めて従業員の希望もヒアリングしたら、医療機関を予約しましょう。予約方法は、メールや電話、FAX、医療機関のホームページに設置してある専用フォームなどから行います。

従業員の人数が多いのなら、メールでの予約がおすすめです。ExcelやWordに人数やコース、従業員情報などをまとめて送信すれば効率的です。従業員の数が少ないのなら、電話やFAXでもよいでしょう。

医療機関の予約フォームは、一度に1人しか予約できません。そのため、従業員が30人いるのなら、30回も入力と送信の手間がかかります。企業における健康診断の予約には適していません。

受診日前に、従業員にリマインドメールを送る

人事や労務担当が予約をとっていても、従業員が健診の日時を忘れてしまうケースは少なくありません。このようなことがないよう、受診日が近づいてきたらリマインドメールを送りましょう。

受診日の前日にしかリマインドを送らないケースもありますが、あまりおすすめできません。早い段階で従業員が健診を忘れていた場合、ほかに予定を入れてしまう可能性があるためです。何日前がベストとは断言しにくいですが、1週間前、3日前、前日のように、数回にわけて送ると上記のようなリスクを回避できるでしょう。

また、リマインドメールを送るときは、CCに従業員の上司や部門の責任者などを加えておくと、情報を共有できます。上司が健診のことを忘れてしまい、従業員に出張や重要な仕事を命じるといった事態を防げます。

健康診断予約に関する注意点

企業における健康診断の予約に関しては、いくつか覚えておくべき注意点があります。以下のような事態が発生する可能性があるため、対策と併せて把握しておきましょう。

従業員が受診を拒否する場合

従業員が受診を拒否するのなら、健康診断を受ける義務があることを明確に伝えることが大切です。企業は、労働安全衛生法により従業員に健康診断を受けさせる義務がありますが、従業員にもこれを受ける義務が発生します。

たとえ従業員の意思で健康診断を拒否し受診しなかったとしても、企業は労働安全衛生法違反となり、50万円以下の罰金を科せられるおそれがあります。このような事態を避けるべく、従業員に説明したうえで理解を求めなくてはなりません。

受診を拒否したときの対応を、就業規則に記載しておくのも有効です。たとえば、受診を拒否したものは懲戒処分の対象になるというような一文を入れておけば、その旨を従業員に説明し受診を促せます。

従業員が日程を変更したり無断でキャンセルしたりする場合

日程変更に関しては個々の都合もあるため、ある程度仕方がありません。また、無断でキャンセルする従業員も一定数現れる可能性がありますが、いずれにしても確認作業と再度の日程調整、予約が必要です。

従業員から日程の変更を申し入れられたのなら、改めて都合のよい日時を聞き取り、医療機関にキャンセルと再予約の連絡を入れましょう。無断キャンセルは、従業員が申告しない限り発覚しない可能性があるため、人事や労務担当者が本人、または医療機関へ定期的に確認する必要があります。

効率化のポイント

従業員が多い企業の場合、健康診断の日程調整や予約作業は煩雑になる傾向があります。ただ、以下の方法を採用すれば、このような手間を軽減し効率的な健康診断の運用が可能です。

従業員の希望を整理しやすいツールを使う

ツールを用いれば、健康診断に関する業務の効率化が可能です。たとえば、Googleフォームを利用すれば、プルダウン式や選択式などのアンケートを自由に作成でき、一覧化した結果をスプレッドシートへ反映させられます。

また、Googleフォームに予約や実施状況などのステータスを確認できる項目を追加しておくと、より効率化できます。日時調整中や予約済み、受診済みなどの項目を追加しておけば、ひと目で状況を把握できるでしょう。

なお、従業員にメールを送り回答をExcelに入力する手法でも希望する日時や医療機関の確認、管理は可能ですが、効率的とはいえません。手間がかかるうえに、入力ミスによる二度手間も発生する可能性があります。

外部サービスに業務を委託する

外部サービスに業務を委託すれば、健康診断に関連する業務の負担を大幅に軽減できます。従業員の日時調整や医療機関への連絡、受診状況の確認の業務から解放され、人事や労務担当者はほかの業務へ注力できます。

健康診断のウェブ予約システムを導入するのもひとつの手です。従業員はシステムを用いて直接医療機関に予約ができるほか、管理者はダッシュボードで受診状況をリアルタイムに把握できます。このようなシステムの導入も、検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

会社内での集団健診と、従業員による個別受診にはそれぞれメリットとデメリットがあります。人事や労務担当者は把握しておくべき内容だといえるでしょう。健康診断を予約する際は、時期を決めて従業員の希望を聞きとり、そのうえで予約を行ってリマインドメールを送ることも忘れないでください。

本記事でお伝えしたように、健康診断に関連する業務の効率化、負担軽減にはアウトソーシングやシステムの導入がおすすめです。

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