特定保健指導とは? 実施内容や対象基準など基礎を解説

「特定保健指導」は、メタボリックシンドロームに該当する対象者のリスク軽減を目的とした保健指導です。特定保健指導は特定健康診査の結果により、「情報提供」「動機付け支援」「積極的支援」に分類されます。本記事では、特定保健指導を受けるべき従業員を抱える企業経営者に向けて、特定保健指導の概要や重要性、種類などを解説します。

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特定保健指導とは

「特定保健指導」とは、特定健康診査の受診後に、対象者に対して行われる保健指導です。対象者は生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の見直しや改善によって、リスク軽減が期待できる人に限られています。また、決められた選定方法において、「動機付け支援」および「積極的支援」に該当した人に実施されます。

特定保健指導の目的は、「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」に着目し、対象者や予備群を減らすことです。メタボリックシンドロームを引き起こす原因として、主にカロリー過多や運動不足、生活習慣の乱れなどが挙げられるでしょう。放置してしまうと、動脈硬化のリスクが上昇し、狭心症や心筋梗塞などの心疾患を患う危険性があります。

そのため、特定保健指導においては、生活習慣を改善するために、自ら行動目標を設定して実行できるよう、個々の特性に合わせた支援が行われます。特定保健指導を行うのは、専門知識を持つ医師や保健師、看護師、管理栄養士です。

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そもそも特定健康診査とは

特定健康診査とは、40歳から74歳までを対象に、メタボリックシンドロームの定義を導入した健康診査です。メタボリックシンドロームは、内臓肥満だけではなく、高血圧・高血糖・脂質異常が集積した状態で、心疾患や脳卒中のリスクが高まってしまいます。

つまり、特定健康診査は、このような状態である対象者や予備群を抽出し、前述した特定保健指導を受けてもらうことが目的です。この健診では、以下の項目を実施しています。

【基本項目】

  • 身体診察(理学的検査)
  • 服薬歴や喫煙歴等の質問票の記入
  • 身体測定(身長・体重・BMI・腹囲)
  • 血圧測定
  • 血液検査(血中脂質検査・肝機能検査・血糖検査)
  • 尿検査(尿糖・尿蛋白)

【医師が必要と判断した場合に実施する項目】

  • 心電図
  • 眼底検査
  • 貧血検査(赤血球・血色素量・ヘマトクリット値)
  • 血清クレアチニン検査

現代における特定保健指導の重要性

2020年から続く新型コロナウイルス感染症の蔓延により、外出自粛や在宅勤務などを余儀なくされ、生活様式が変化しました。ステイホーム期間において、自主的に生活習慣を見直し、健康的な生活を送る人がいる一方、運動不足やストレスの蓄積、食生活の乱れによって、体重が増加した「コロナ太り」という言葉も定着しつつあります。

コロナ禍における肥満傾向は、生活習慣病などのリスクにとどまらず、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクも伴うことを否めません。そのため、特定保健指導の重要性が高まってきている状況です。

特定保健指導の対象基準

特定保健指導の対象者は、腹囲とBMIの数値による内臓脂肪蓄積のリスク、血糖・脂質・血圧の数値および喫煙歴の有無による生活習慣病の追加リスクが判定された人です。それぞれの数値が判定基準値を超えていることが条件であり、リスク数に応じて、自動的に必要な保健指導の種類へ分類されます。

しかし、自動判定通りだけではなく、検査結果によっては、医師が特定保健指導と医療機関への受療のどちらを勧めるかを判定する場合もあるでしょう。

特定健康診査の対象者は、実施年度において40歳から74歳までの医療保険加入者です。また、医療保険加入者の被扶養者(家族)も、同じく40歳から74歳までであれば対象といえます。

特定保健指導の実施内容

特定保健指導は、特定健康診査の結果により、必要な保健指導に分類されます。ここでは「情報提供」から、本格的な保健指導である「動機付け支援」と「積極的支援」までの各項目について解説します。

1.生活習慣見直しのきっかけを作る「情報提供」

情報提供とは、生活習慣を見直すきっかけを作るための情報を提供する、軽度の保健指導です。本格的な特定保健指導より一歩手前のステップであり、身体の状態の把握や健康的な生活の重要性を認識してもらうために必要な情報提供を行います。

その情報には、健診結果や質問票などをもとに、個々に合わせた内容が示されており、主に情報提供書の同送やIT活用による情報提供画面の利用などがあります。例えば、健診結果の経年変化をわかりやすく表示したグラフ資料を送付することで、自分の身体の変化を把握し、健康への意識を高めることが期待できるでしょう。

2.健康状態の自覚と改善に向けた「動機付け支援」

動機付け支援とは、対象者が自身の健康状態を自覚し、生活習慣を改善するために、自主的な取り組みを支援する保健指導です。面談で医師や保健師、管理栄養士とともに行動計画を策定し、改善に向けた動機付けを行います。

1人あたり20分の個別面談、または8名以下のグループで80分以上のグループ面談が原則1回実施され、そこで行動計画を策定します。その6ヶ月後に実績評価があるので、支援期間は延べ半年かかるでしょう。実績評価は、面談または電話・メール・手紙などの通信手段において行われ、策定した行動計画が実行されているか、身体状況や生活習慣に変化をもたらしたかなどが評価されます。

動機付け支援のレベルとしては、メタボリックシンドロームのリスクが見え隠れしている状態といえます。少しでもリスクを減らすため、積極的に活用すべき保健指導です。

3.継続的なサポートを行う「積極的支援」

積極的支援は、策定した行動計画に基づいた、対象者による主体的な生活改善への取り組みを、継続的に支援する保健指導です。動機付け支援と同様に、まず医師や保健師、管理栄養士との面談で行動計画を策定し、内臓脂肪の減量に向けて積極的に支援します。

具体的には、初回に個別面談またはグループ面談で、行動計画を策定するところまでは、動機付け支援と同様ですが、その後は3ヶ月以上の継続的な支援が行われます。この支援はポイント制が設けられており、合計180ポイント以上の支援が実施されると終了する形です。また、進捗状況をチェックする中間評価も含まれています。

積極的支援のレベルとしては、メタボリックシンドロームのリスクが増えてきている状態です。内臓脂肪を減らすためには、継続的なサポートがある、この保健指導を活用すべきでしょう。

特定保健指導の実施率向上は健康経営にもつながる

従業員の健康状態を経営資産として重視する「健康経営」は、現代において企業が最も取り組むべき課題です。

「医療制度構造改革」により、特定健康診査や特定保健指導が義務化され、健康経営への関心がより高まっています。健康経営の実現には、従業員の健康状況の把握や健康づくりの推進、こころの健康づくり、生活習慣病の予防・改善のサポートが必要です。これにより、生産性の向上や医療費の負担軽減、企業のイメージアップ、リスクマネジメントなどに効果が期待できます。

健康経営には、従業員の健診受診率を上げるだけではなく、生活習慣病リスクの高い年代である従業員の、特定健康診査および特定保健指導の実施率向上が重要なカギといえるでしょう。

まとめ

特定保健指導は、特定健康診査によるメタボリックシンドロームのリスクが高い人を対象とした生活習慣の改善をサポートする保健指導です。メタボリックシンドロームのリスクは、現代のコロナ禍における外出自粛や在宅勤務などの生活の変化に伴い、増加傾向であるといわれています。そのような状況の中で、特定保健指導は内臓脂肪を減らし、病気のリスクを減らすために活用すべきものです。

特定保健指導には支援レベルが分類されており、動機付け支援や積極的支援では、行動計画に基づいて個々に合わせた支援を行います。

また、従業員の特定健康診査と特定保健指導の実施率向上は、企業の健康経営の実現においてとても重要な課題です。「ウェルネスの空」では企業の健康経営に欠かせない、さまざまな情報を発信しているので、参考にしてみてください。


この記事の監修医師
甲斐沼 孟先生( TOTO関西支社健康管理室産業医)

一般的に、特定保健指導とは生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による生活習慣病の予防効果が期待できる人々に対して、産業医や保健師など産業保健スタッフが中心となって生活習慣を見直すサポートをします。

代表的な特定保健指導においては、特定健康診査の結果に基づいて、主にメタボリックシンドロームの予防を目的に行われる健康支援のことを意味しています。

対象者が特定保健指導を受けないと、健康問題を引き起こすリスクが高まって、社員が外来通院や入院治療を余儀なくされて、会社全体の生産性が低下してしまうことに繋がります。例えば、50歳代の会社員の場合は、45歳の時に受けた特定健診でメタボリックシンドロームのリスクが高いという結果が出たものの、特定保健指導を受けず、徐々に体力が低下して、頻繁に仕事を休む日々が続くなどの事例も経験されます。

メディコレ医師監修:甲斐沼 孟 様

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